いつからだろう。私は頑張って生きていないと、今日という日を生き残れなくなった。私は今日も、頑張って生きている。
 春香がそうしたように、四階の窓から衝動的に飛び降りようとしたことも、一度や二度ではない。気が付いたらカッターナイフの刃を手首に当てていたことも多々あった。
 春香の死を目の当たりにしたあの時、きっと私の魂も、死に神の鎌に刈られてしまったのだ。私の魂は死に魅入られ、地獄へと続く鎖につながれた。鎖の端は、春香が握っている。私はいつか、春香に導かれて地獄に堕ちるだろう。私は、そうなることを待ち望んでいる。
「若月。大丈夫か?」
 山本くんの問いに、大丈夫と呪文のように繰り返す。大丈夫かそうでないかといったら、私はきっと、大丈夫ではない。それでも私は大丈夫と言う。
「ちゃんと眠れてるのか」
「どうかな。午前零時に召喚されちゃうから、眠れてるって言うのかな」
「俺もそうだったわ」
 山本くんは苦笑して、スマホの作業に戻った。
「やっぱり無理だな。どうやっても削除できない」
 山本くんの視線の先には、ゲームアプリ『パラレル人狼ゲーム』のアイコンがあった。私には思い至らなかったが、アプリを削除することで、ゲームを回避できないか試したようだ。
「若月もやってみてくれ」
 私は頷いて自分のスマホを操作する。
「こっちも無理みたい」
 削除しようとしても、エラーメッセージが表示されるだけだった。
「無理かあ。正攻法で、ゲームをクリアするしかないのかなあ」
 松本さんが始業ぎりぎりに教室に飛び込んできた。
 私を含めて、会議で追放された坂口くん以外の、七人全員がそろったことになる。
「どういうことかな」
 私は前の席の山本くんに小声で尋ねた。
「用心棒の守りが成功した。そういうことだろうな。生き残っている七人の中に、用心棒がいるってことだ」
 ちょうどその時、竹原くんと田城くんが教室の隅で話し込んでいるのが見えた。私はなんとなく嫌な予感がした。