「え……ご……5票? え? いや、1票のはず……え? え?」
脳の処理が追いつかない。
いや、おかしいじゃないか。
僕らグループFは全員自分に投票したのだから1人が5票集めるわけがない。
僕はギギギと骨を鳴らすようにグループメンバーの方に振り返る。
そして、橘さんを除く3人がサっと視線をそらした。
「ごめん……ごめんなさい……!」
「三浦っち……ごめんね……」
「…………」
なぜか謝罪の言葉を漏らす有沢姉妹。
池田に関しては無言のまま俯いていた。
「なんでだよっ!? なんで全員の票が僕に集まっているんだよ!?」
「それは……私が……説明します」
苦い顔をしながら唯一僕から視線を逸らしていなかった橘さんが絞り出すように言葉を紡ぐ。
「初日……三浦くんが自室で震えていたあの日、私たちは全員で集まって……決めていたの。キミに……投票しようって」
「初日……から……っ!?」
「リースの試練はきっとこれだけじゃ終わらない。だから一番役に立ちそうにないキミを犠牲にすることによって……私達は先に進みます」
今の言葉は本当に橘さんが言ったのだろうか?
あの優しくて思いやりのある橘さんが?
昨日……あんなにも愛し合ってくれた橘さんが?
「でもそれはあまりにも可哀想だから全員で一日だけキミに尽くすことを決めたの」
「つまりは……死んでもらう代わりに……せめて最後の日くらいは良い思いをさせてやろうっていう……同情?」
「……はい」
ついに目線を下に落とす橘さん。
ふざけるな。
ふざけるなよ……っ!
「ふざけんなぁぁぁぁっ! じゃあ何か!? 昨日食事を振舞ったのも、デザートを振舞ったのも……お前が初めてを差し出したのも……全部、全部、僕を騙す為だったっていうのか!?」
「……恨んでくれて……いいから」
恨んでくれていい?
当たり前だろう!?
恨まれないとでも思っていたのかこの女。
「あー、三浦くん? リースちゃんから残念な報告があるんだけどね、そこの橘さん、別に性行為するの初めてじゃないよ?」
「……えっ?」
「それどころか内心で『下手くそだなぁ』って思っていたみたい」
「…………」
——『死ぬかもしれない前に……どうか私の初めてをもらってください』
「は……はは……それすらも……嘘だったのかよ……もうすげえよお前……女優になれよ」
僕は全てに絶望し両膝を付く。
「なぁ。リースさん。僕はこのまま素直に死を受け入れる。でもさ、最後に面白い余興を提案させてくれ」
「ん~? なになに~?」
「キミの持つ光の剣を……橘さんに渡してくれないか?」
「なんで?」
「わからないか? 橘に僕を殺させるんだよ」
「なっ……!?」
「なにそれ!? めっちゃ面白いじゃん! 貸すし! そんな面白い余興見せてくれるんなら喜んで貸すし。はい橘さん」
「……えっ?」
光の剣を投げ渡され、顔面蒼白になりながらその場で狼狽える橘さん。
「さっ、殺しちゃって! 首を堕としてもいいし、心臓に突き刺してもいいからさ」
「ど、どうして、どうして私にそんなことをさせるの!? 三浦君!!」
どうして?
どうしてだって?
そんなの決まっているじゃないか。
「これが僕のせめてもの復讐だ。僕はリースに殺されるんじゃない。キミに殺されるんだ。罪悪感で苦しめ。僕の死を永遠に刻みつけてやる!」
「そんな……そんなのって……」
「あー、橘ちゃん? ちなみに殺人を断った場合、待っているのはキミらグループ全員の死だから。一人を殺すか、全員で死ぬか、私はどっちでもいいんだけどね」
「「……ぅ」」
後ろに居たグループFの面々の表情が恐怖で引きつる。
その顔を見て、橘さんは決意したようだ。
彼女の持つ剣が僕の首筋に置かれる。
「……ごめんなさい……ごめんなさいぃぃぃっ!!」
激しい懺悔の声を共に、橘さんの持つ光の剣は激しい勢いを保ったまま無惨に振り下ろされた。
最後に願います。
僕を裏切ったこいつらが少しでも長く生き残りますように。
僕を殺したという罪悪感を……少しでも長く持ち続けますように。
強く、願う。
◇ ◆
脳の処理が追いつかない。
いや、おかしいじゃないか。
僕らグループFは全員自分に投票したのだから1人が5票集めるわけがない。
僕はギギギと骨を鳴らすようにグループメンバーの方に振り返る。
そして、橘さんを除く3人がサっと視線をそらした。
「ごめん……ごめんなさい……!」
「三浦っち……ごめんね……」
「…………」
なぜか謝罪の言葉を漏らす有沢姉妹。
池田に関しては無言のまま俯いていた。
「なんでだよっ!? なんで全員の票が僕に集まっているんだよ!?」
「それは……私が……説明します」
苦い顔をしながら唯一僕から視線を逸らしていなかった橘さんが絞り出すように言葉を紡ぐ。
「初日……三浦くんが自室で震えていたあの日、私たちは全員で集まって……決めていたの。キミに……投票しようって」
「初日……から……っ!?」
「リースの試練はきっとこれだけじゃ終わらない。だから一番役に立ちそうにないキミを犠牲にすることによって……私達は先に進みます」
今の言葉は本当に橘さんが言ったのだろうか?
あの優しくて思いやりのある橘さんが?
昨日……あんなにも愛し合ってくれた橘さんが?
「でもそれはあまりにも可哀想だから全員で一日だけキミに尽くすことを決めたの」
「つまりは……死んでもらう代わりに……せめて最後の日くらいは良い思いをさせてやろうっていう……同情?」
「……はい」
ついに目線を下に落とす橘さん。
ふざけるな。
ふざけるなよ……っ!
「ふざけんなぁぁぁぁっ! じゃあ何か!? 昨日食事を振舞ったのも、デザートを振舞ったのも……お前が初めてを差し出したのも……全部、全部、僕を騙す為だったっていうのか!?」
「……恨んでくれて……いいから」
恨んでくれていい?
当たり前だろう!?
恨まれないとでも思っていたのかこの女。
「あー、三浦くん? リースちゃんから残念な報告があるんだけどね、そこの橘さん、別に性行為するの初めてじゃないよ?」
「……えっ?」
「それどころか内心で『下手くそだなぁ』って思っていたみたい」
「…………」
——『死ぬかもしれない前に……どうか私の初めてをもらってください』
「は……はは……それすらも……嘘だったのかよ……もうすげえよお前……女優になれよ」
僕は全てに絶望し両膝を付く。
「なぁ。リースさん。僕はこのまま素直に死を受け入れる。でもさ、最後に面白い余興を提案させてくれ」
「ん~? なになに~?」
「キミの持つ光の剣を……橘さんに渡してくれないか?」
「なんで?」
「わからないか? 橘に僕を殺させるんだよ」
「なっ……!?」
「なにそれ!? めっちゃ面白いじゃん! 貸すし! そんな面白い余興見せてくれるんなら喜んで貸すし。はい橘さん」
「……えっ?」
光の剣を投げ渡され、顔面蒼白になりながらその場で狼狽える橘さん。
「さっ、殺しちゃって! 首を堕としてもいいし、心臓に突き刺してもいいからさ」
「ど、どうして、どうして私にそんなことをさせるの!? 三浦君!!」
どうして?
どうしてだって?
そんなの決まっているじゃないか。
「これが僕のせめてもの復讐だ。僕はリースに殺されるんじゃない。キミに殺されるんだ。罪悪感で苦しめ。僕の死を永遠に刻みつけてやる!」
「そんな……そんなのって……」
「あー、橘ちゃん? ちなみに殺人を断った場合、待っているのはキミらグループ全員の死だから。一人を殺すか、全員で死ぬか、私はどっちでもいいんだけどね」
「「……ぅ」」
後ろに居たグループFの面々の表情が恐怖で引きつる。
その顔を見て、橘さんは決意したようだ。
彼女の持つ剣が僕の首筋に置かれる。
「……ごめんなさい……ごめんなさいぃぃぃっ!!」
激しい懺悔の声を共に、橘さんの持つ光の剣は激しい勢いを保ったまま無惨に振り下ろされた。
最後に願います。
僕を裏切ったこいつらが少しでも長く生き残りますように。
僕を殺したという罪悪感を……少しでも長く持ち続けますように。
強く、願う。
◇ ◆


