3日後に死ぬ人を決めて頂きます

 これほどまでに残酷な光景が存在して良いのだろうか。

「グループAは投票の結果、3票を集めた田中さんが処刑されることになりました~」

「そ、そんな……やめて……やめてぇぇぇぇぇぇっっ!!」

 田中さんの断末魔が空間に木霊する。
 グループAの生き残ったメンバーは涙を流しながら全員下を向いていた。
 死ぬ人を決める投票。
 処刑したのは光の剣を持ったリースではあるのだが、その対象人物を決めたのは他の4人だ。
 つまり、この4人が田中さんを殺したと言っても過言ではない。

「グループBは~、4票を集めた早田くんが処刑されることになりました~」

「なっ……!? てめえら! 俺に投票したら殺すっていったじゃねーか!」

「馬鹿だねー。そんな不和を生み出した人は真っ先に死ぬに決まってるじゃん。じゃあねぇ」

「ち、ちきしょぉぉぉぉぉっ!」

 早田君の首が切断される。
 生き残ったグループBの足元に早田くんの首が転がってくるが、「来るなぁぁっ!」と絶叫しながらグループBの男子が蹴り飛ばしていた。

「グループCは~、3票を集めた冬里くんが死ぬことになりました~」

「えっ!? お、俺!? ど、どうして!? どうしてなんだ皆!? 俺、この3日間あんなに親切にしてやったじゃないか! そっちいる筒井くんより俺の方が尽くしていたはずだ!」

「ごめん……ごめんね冬里くん……」

「ごめんなさい! ごめんなさい!!」

「なんでだよぉぉぉぉっ!?」
 
 グループCの生き残ったメンバーが次々に彼へ懺悔している。
 冬里くんはクラスでも親切心に溢れており、日々のボランティア活動でも表彰されたことのある超善人だ。
 そんな彼が処刑の対象に選ばれるなんて意外としか言いようがない。
 グループCのメンバーはどうして冬里くんに票が集めたのか、その理由を語ろうとはしなかった。
 
「私はキミが投票された理由知っているよ~? 女神様だから人の心が見えるんだ~」

 そう切り出したのはリースだった。
 その言葉に生き残ったグループCの面々の顔が蒼白に変わる。
 
「……!? た、頼む! 死ぬ前に、死ぬ前にこいつらの投票理由を教えて……くれ!」

「顔」

「……へっ?」

「キミはね、『不細工』だから投票が集まったんだよ」

「ぶ……ぶさ……? え? 顔? 顔が悪いから……俺は殺されるの?」

「そうみたい。ちなみにキミに票を入れたのは全員女子だよ。筒井君はイケメンだから生き残った。キミは不細工だから生き残れなかった」

「ふざけるなぁぁぁっ! イケメンじゃないから死ねってか!? 自分達より顔面偏差値が低いから死ねってか!? そんなの……そんなことがあっていいのか!?」

「「「……ごめん」」」

「おま——っ!」
 
 グループメンバーに掴みかかろうとする刹那、リースの持つ剣が冬里くんの腹を貫いていた。
 内蔵が噴出し、即死であることは誰の目にも明らかだった。

「「「…………」」」

「だ~か~ら~、私には心が読めるんだってば。冬里くんが死んで心底ほっとしているのバレているからね」

「「「……っっ!!」」」

 次々にクラスメイトが死んでいく模様を見て、僕は悲しくて涙を滲ませていた。
 そして生き残ったメンバー達の心の醜さには目をそむけたくなる。
 仕方ないとはいえ、どうして他人に投票が出来るんだ……!

「つーぎーはー。キミ達グループFだね」

 来たっ!
 来てしまった。
 僕達のグループの投票開示が始まる。
 グループA~Eは票が同数になることはなかった。
 つまり僕らのグループの作戦はどんな結果になるのかは闇のままということだ。
 僕は精一杯祈る。
 隣で手を繋いでいる橘さんの右手がギュっと固く握られた。
 昨日の夜、一晩中身体を合わせ続けた愛しい人。
 身体を合わせたあの夜に僕は絶対二人で生き残ってみせると心に誓った。
 その最初の関門がこの試練である。

「ふむふむ。グループFはそうきたか~」

 投票結果を見てリースが驚いた様子を見せている。
 きっと彼女も『全員が自身に投票する』という奇策を見せられたは初めてなのだろう。
 リースの表情をみてそんな風に推測する。

「グループFの投票結果ですが~……」

    スッ

  ……え?

  不意に——

  僕と手を繋いでくれていた橘さんが手を離し、池田君達3人の元へと足を動かす。

  まるで僕を突き放すような動き(・・・・・・・・・・・)
 
  橘……さん?

「投票数5票を集めた三浦くんが処刑されることになりました~」




    ◇  ◆