「12時間……以内?」
ハルキは時計ではなくスマホで時間を確認しようとしたが、その時、圏外になっていることに気づく。
「そもそもここはどこだ。山梨……じゃないよな」
「これはどこかの廃校?」
と、再び教室はざわつき始めた。
一方で、先ほど動き出していた兵士たちは、再び壁際に戻り、不気味なほど静かに立ち尽くしている。
「映画で見た殺し合いゲームは、確か孤島で行われていたけど……このゲームもそんな感じなのか」
近くでは、葉月が涙を流しながらも必死に呼吸を整えている。ハルキは彼女の背中をさすってやりたかったが、体が震えてできない。
他にも泣いてる女子たちもいるがそれよりも葉月のことしか頭にない。
すると男が教室の中央に立ち、軽く笑いながら口を開いた。
「あなたたちは映画やゲームの影響を受けすぎですよ。いや、今の若い世代なら映画よりショート動画ばかり好んでますよね? タイパ重視で長いものは見ないと聞いていますが?」
男の不敵な笑みが教室に漂う不安感をさらに煽る。
「だからといって、これはさくっと終わらせられるようなものじゃありません。時間はまだありますので、焦らないでくださいね」
淡々と話す男に、学生たちはじりじりと距離を取る。
その瞬間、男が少し姿勢を正し、無表情で自己紹介を始めた。
「あ、申し遅れました。わたくしはスダです。あと皆さんの名前やプロフィール、すべてこちらで把握済みです」
その冷たい宣告に、教室の空気はさらに緊張感を増していった。
「で……それからー」
とスダが話を続けていると……。
「いやよ! だからわたし、このサークルで卒業旅行やめようって思ったのに……」
名津祥子の声が教室中に響く。彼女は激しく泣き喚き始めた。
「他の友達とオーストラリア行く予定だったの! そっちだけにすればよかった! 山梨なんて来なければ……!」
声を震わせながら、祥子はさらに愚痴をこぼし続ける。
「しかも格安旅行バスで腰も痛いし……今夜泊まる宿もボロボロで……」
その場にいた数人の女子が、そんな彼女の言葉にドン引きして顔を見合わせる。
「いや、今回の宿とったのハルキだろ」
不満げに権野が呟くと、教室の視線が一気にハルキに向けられる。
ハルキは困惑した表情を浮かべ、ぎこちなく後退りしながら口を開いた。
「ごめんなさい……でも、みんながそれでいいって言ったから……それに、条件に合う宿なんてあそこくらいしか……」
実際、ハルキは卒業旅行の幹事を押し付けられた挙句、内定も決まらず焦りの中で手配を進めていた。
旅行に不慣れな彼が宿を選ぶ際、メンバーから出された無茶な条件――「安いこと」「美味しいご飯」「カラオケもある」「温泉がある」――を全て叶えるため、仕方なく選んだのが、あの古びた温泉宿だった。
「そんな言い訳通用するか!」
権野が怒鳴り声を上げ、ハルキの胸ぐらを掴む。
教室は一瞬、静まり返る。その間も、祥子はヒステリックに泣き叫び続けていた。
「うるさい。まだこっちが説明してるところでしょうが」
その瞬間、スダの低い声が響いた。
全員がスダに視線を向けると、彼の手が軽く動き、何かを投げつけた。
次の瞬間、鈍い音が教室に響き、それが祥子の頭に当たった。
「きゃああああ!」
祥子が絶叫する間もなく、彼女の体は力なく崩れ落ちた。
権野は驚きのあまり、ハルキの胸ぐらを掴む手を離していた。
教室の空気が凍りつく中、祥子は動かなくなっていた。頭からは血が流れ、床に広がっていく。
そこに壁側の兵士が数人で黒い布を祥子の上に被せた。そして被せたら即座に立ち位置に戻った。
「もう、ゲームは始まっているんですよ」
スダは微笑みながら、教室の中央に立つ。そして、天井付近に向けて指をさした。
そこには、教室の壁に埋め込まれるようにして、デジタル表示の大きな時計が出現していた。
残り時間:11時間00分00秒
もう1時間過ぎていた。
時計のカウントが始まると同時に、スダの声が冷たく響く。
「さあ、残り時間を有意義に使ってください。ね?」
教室に漂う冷たい恐怖が、スダの薄笑いと共に広がっていった。
ハルキは時計ではなくスマホで時間を確認しようとしたが、その時、圏外になっていることに気づく。
「そもそもここはどこだ。山梨……じゃないよな」
「これはどこかの廃校?」
と、再び教室はざわつき始めた。
一方で、先ほど動き出していた兵士たちは、再び壁際に戻り、不気味なほど静かに立ち尽くしている。
「映画で見た殺し合いゲームは、確か孤島で行われていたけど……このゲームもそんな感じなのか」
近くでは、葉月が涙を流しながらも必死に呼吸を整えている。ハルキは彼女の背中をさすってやりたかったが、体が震えてできない。
他にも泣いてる女子たちもいるがそれよりも葉月のことしか頭にない。
すると男が教室の中央に立ち、軽く笑いながら口を開いた。
「あなたたちは映画やゲームの影響を受けすぎですよ。いや、今の若い世代なら映画よりショート動画ばかり好んでますよね? タイパ重視で長いものは見ないと聞いていますが?」
男の不敵な笑みが教室に漂う不安感をさらに煽る。
「だからといって、これはさくっと終わらせられるようなものじゃありません。時間はまだありますので、焦らないでくださいね」
淡々と話す男に、学生たちはじりじりと距離を取る。
その瞬間、男が少し姿勢を正し、無表情で自己紹介を始めた。
「あ、申し遅れました。わたくしはスダです。あと皆さんの名前やプロフィール、すべてこちらで把握済みです」
その冷たい宣告に、教室の空気はさらに緊張感を増していった。
「で……それからー」
とスダが話を続けていると……。
「いやよ! だからわたし、このサークルで卒業旅行やめようって思ったのに……」
名津祥子の声が教室中に響く。彼女は激しく泣き喚き始めた。
「他の友達とオーストラリア行く予定だったの! そっちだけにすればよかった! 山梨なんて来なければ……!」
声を震わせながら、祥子はさらに愚痴をこぼし続ける。
「しかも格安旅行バスで腰も痛いし……今夜泊まる宿もボロボロで……」
その場にいた数人の女子が、そんな彼女の言葉にドン引きして顔を見合わせる。
「いや、今回の宿とったのハルキだろ」
不満げに権野が呟くと、教室の視線が一気にハルキに向けられる。
ハルキは困惑した表情を浮かべ、ぎこちなく後退りしながら口を開いた。
「ごめんなさい……でも、みんながそれでいいって言ったから……それに、条件に合う宿なんてあそこくらいしか……」
実際、ハルキは卒業旅行の幹事を押し付けられた挙句、内定も決まらず焦りの中で手配を進めていた。
旅行に不慣れな彼が宿を選ぶ際、メンバーから出された無茶な条件――「安いこと」「美味しいご飯」「カラオケもある」「温泉がある」――を全て叶えるため、仕方なく選んだのが、あの古びた温泉宿だった。
「そんな言い訳通用するか!」
権野が怒鳴り声を上げ、ハルキの胸ぐらを掴む。
教室は一瞬、静まり返る。その間も、祥子はヒステリックに泣き叫び続けていた。
「うるさい。まだこっちが説明してるところでしょうが」
その瞬間、スダの低い声が響いた。
全員がスダに視線を向けると、彼の手が軽く動き、何かを投げつけた。
次の瞬間、鈍い音が教室に響き、それが祥子の頭に当たった。
「きゃああああ!」
祥子が絶叫する間もなく、彼女の体は力なく崩れ落ちた。
権野は驚きのあまり、ハルキの胸ぐらを掴む手を離していた。
教室の空気が凍りつく中、祥子は動かなくなっていた。頭からは血が流れ、床に広がっていく。
そこに壁側の兵士が数人で黒い布を祥子の上に被せた。そして被せたら即座に立ち位置に戻った。
「もう、ゲームは始まっているんですよ」
スダは微笑みながら、教室の中央に立つ。そして、天井付近に向けて指をさした。
そこには、教室の壁に埋め込まれるようにして、デジタル表示の大きな時計が出現していた。
残り時間:11時間00分00秒
もう1時間過ぎていた。
時計のカウントが始まると同時に、スダの声が冷たく響く。
「さあ、残り時間を有意義に使ってください。ね?」
教室に漂う冷たい恐怖が、スダの薄笑いと共に広がっていった。