黒い布をかけられた信成子の死体。
息が荒く体を震わせながら頭を抱え、うずくまる時雄。その横で権野は怒りをあらわにする。

「時雄……お前、アホか！ あの写真や動画、美鶴の言うことを簡単に信じるなんて……！」
権野の声は震えていたが、時雄は返事をしない。ただ苦しげに顔を歪めているだけだ。

その様子を見たハルキが、ぼそりと口を開いた。
「……ピースしてる顔、ひきつってたよ。信成子ちゃん。あれ、酷いことされた人が……無理やり同意したって意味で両手でピースしてるやり口だ……」

その言葉に葉月は顔を歪め、黙り込む。

時雄はハルキの言葉を聞くと、目の前が真っ白になったかのように顔を上げた。
「信成子ぉおおおおおお！！！」
そう叫ぶと、震える手で床に落ちたカッターを拾い、自分の首に当てた。

「やめろ、時雄！」
権野が声を張り上げるが、時雄は聞く耳を持たない。

「信成子ぉおおお……俺は……俺は……何もかも信じられない……」
刃が皮膚に触れ、赤い筋がじわりと浮き上がる。

「待て！ お前は死ぬ必要なんてない！！」

権野が駆け寄り、素手でカッターの刃を握り込む。血が流れ出すが、それでも力いっぱい押さえ込んだ。
「やめろ……！ こんなことで、お前が死んだら信成子がもっと浮かばれないだろ！」

だが時雄は取り乱し、権野の頬にカッターを振り下ろした。浅く切られた傷口から血が流れ、権野は歯を食いしばって時雄を押さえ込む。
「くそっ……落ち着け、時雄！」

その様子を、美鶴は笑いながら見つめていた。スマホを操作し、新たな動画を再生する。教室中に信成子の泣き叫ぶ声が響き渡る。
「くそおおおおお！！」
時雄は発狂する。権野は出血しながらも時雄を抑え込んだ。