華子は日頃、サークル内で地味な存在として扱われ、特にレナミから「座敷童子」や「雑用女」と呼ばれる日々に耐えてきた。

信成子は倒れたレナミの手から滑り落ちた刃物が首に当たり、少し血がにじんでいた。助けてくれた華子に感謝の言葉をかけようとしたが、彼女は冷たく信成子を見下ろした。

「ただ、レナミがうるさいだけ」
そう言い放つと、短い木刀を信成子に向ける。

「あなたもレナミと一緒に私の悪口を言ってたでしょ? 幽霊部員が部室の雰囲気悪くしてるのも本当だし。許す気にはならない。でも、レナミほど殺す理由はないわ」

吐き捨てるような言葉に、信成子は涙をこぼしながら時雄に助けを求める。

「時雄……助けて」

しかし、時雄は一歩も動かず、信成子を冷ややかな目で見つめるだけだった。

「時雄くん、彼女じゃないか!」とハルキがくしゃくしゃのハンカチを取り出し、信成子の傷口に当てようとする。
「やめろ!」
時雄が声を荒げて止めた。

「何があろうと助けるべきだろ? 彼氏なら……」
とハルキが訴えるが、時雄は首を横に振る。

「……もう彼女じゃない」

そのとき、後ろで美鶴がスマホをいじりながら声を上げた。
「……あったあった。時雄、これを見ろ」

美鶴が突き出したスマホには、信成子の全裸写真が映し出されていた。笑顔で、片手でピースをしている姿だ。葉月や華子は目を背け、息を飲んだ。

「動画もあるぞ……見ろよ。楽しかったんだろ、信成子ちゃん……ほら、獅子頭や……ケツとも……」

美鶴の声はどこか楽しげだが、その目は血走っている。知的で誠実な印象だった彼の裏の顔が完全に露わになっていた。
葉月や華子、ハルキは目を逸らした。


時雄は美鶴が流す動画を凝視し、信成子の裏切りを信じ込む。

「あああああああ!!!」
「時雄、待て!!!」
叫んだ時雄は権野の制止を振り切り信成子の喉をカッターで切り裂いた。