レナミは鋭い目で信成子を見据え、声を張り上げた。

「みんな聞いて! 信成子がどんなことをしたか、教えてあげる!」

場の空気が緊張に包まれ、全員の視線が身動きの取れず苦しむ信成子とそれを嘲笑うレナミに注がれる。

「この女、時雄に夢中になって練習をおろそかにしたの。それだけじゃない、自分のタイムが落ちたのを認められず、逆恨みして私に下剤を飲ませたのよ! そのせいで、私は試合に出られなくなった!」

その言葉に、周囲はざわめき始めた。

「嘘だろ……信成子がそんなことを?」
「下剤って……本当にそんなことするか?」

信成子は焦った様子で否定する。
「ちょ、ちょっと待ってよ! 嘘よ! 私がそんなことするわけないじゃない!」

だが、レナミはさらに畳みかける。
「嘘じゃないわ! 試合直前、信成子からもらったお茶を飲んで……突然お腹を壊して動けなくなったの。トイレに缶詰、吐き気も催して……救急車で運ばれて病院に行ったら、食中毒かなにか意図的に混ぜられたものを飲んだんじゃないかって言われたのよ。私は信成子は1番の親友でもありライバル……そんなわけないと思ってお茶を飲んだことは黙ってたけど……今だから言うわ! あのお茶に下剤が入ってたの!」

信成子は言葉を詰まらせる。周囲の視線が徐々に冷たくなり始めた。

「違う! 違うってば! たまたま何か食べて食あたり起こしたんじゃないの? あんた雑食だから! それにあんただって練習怠けてたじゃん! へんな男ばっかり漁ってたくせに!」

その発言に場が凍りつく。レナミは眉をひそめたが、冷静を保ちながら言い返す。
「は? なによそれ」

信成子はなおも挑発的に言葉を続けた。
「確かに、私……練習をサボって時雄とのデートしてたけどさ。あんたは特定の彼氏できなくてやけになってたでしょ?」

レナミの目が怒りで燃え上がる。
「違う! 黙りなさい!」

部員たちは困惑しながらそのやり取りを見守っていた。

「うるさい! 黙れ! お前だって時雄以外の男と関係があったんじゃないの!?」

その発言に、信成子は声を発しなくなり顔色が悪くなった。時雄が愕然とした表情を浮かべる。
「信成子……嘘だろ……?」

信成子は必死に弁解しようとする。
「違うよ、時雄! 信じて! あれは……あれは!!!」

だが、レナミは冷笑を浮かべながら追い打ちをかけた。
「楽しんでたじゃないー」

「違う!」
信成子は声を振り絞ったが、美鶴の後ろめたそうな顔が、周囲に疑念を抱かせた。

レナミは勝ち誇ったように笑い、信成子をさらに追い詰める。
「時雄にだって、この目で見て欲しいわ。どうせもう誰も信用できないんだから!」

その瞬間――

突如、華子が背後からレナミを木刀で殴り倒した。

「もうやめなさいよ……高飛車女!」
華子の叫びが響き渡る。倒れたレナミは頭を押さえながら振り返るがあまりの痛みにうずくまって倒れ込んだ。


そして黒い布を兵士たちにかけられた。
「……また……やっちゃった」
華子は顔を引き攣らせた。
空気が重く沈む中、それでも時計のカウントダウンは止まることなく進み続けていた。