バスは順調に進む。周りの学生たちは次第に長旅に疲れてきたのか眠りにつき始めた。
 車体が揺れるたびに、寝落ちそうな学生たちが時折身体を傾ける。
 あっという間に車内は静かになり、エンジン音だけが響いている。

 ハルキも目を閉じ、浅い眠りに落ちかけた。その時、不意に車内が暗くなった。バスは長いトンネルに入ったようだ。ライトの点滅がまどろみの中でチラチラと感じられる。

 ふと、ハルキは運転席に目を向けた。運転手の姿が目に入る。運転手の姿は、黒い帽子と分厚いマスクに覆われていた。
 その様子は異様に思えたが、眠気に勝てずそのまま意識を手放した。












 
 ハルキは目を開けると、周囲に見覚えのない光景が広がっていた。どこかの学校の教室ではある。
 古びた机と椅子が乱雑に四方に積まれている。その周りには兵士の大きなマネキンみたいな人形も無数にある。
蛍光灯は不安定に揺れ、壁には何かの染みが広がっている。

周りには、仲間たちの顔が青ざめているのが見えた。19人いるが机と椅子がないだけで少し広い教室である。空気はやや涼しい。

 

「こんにちは」
気づくと黒板の前にいた男は、淡々とした声でそう言った。
ハルキたちは凍りついたように彼を見つめる。その男は、抑揚のない口調で続けた。

「まずは、ひとつお知らせをしておきます




――みなさんは、これから死にます」



その言葉は不気味な冷たさを伴い、教室の空気を一瞬で凍りつかせた。