「……!」
草刈り鎌を手に取った時雄が、鍋田の首元を裂いた。
「……時雄……」
「鍋田の野郎……何度も恩を仇で返しやがって」
鍋田は地面に崩れ落ち、近くにいた富弥がタオルハンカチで止血を試みるが、血は止まらない。
「就活に困ったって泣きついて、権野が紹介してやったのに……結局、違うところで内定が決まったら蹴りやがったんだよ」
時雄の言葉に、ハルキは鍋田が以前、権野や他のメンバーにいじられないよう必死でヘコヘコしていた様子を思い出した。しかし、彼はその裏でハルキに愚痴を漏らし、さらには平気で裏切ったのだ。
「なべちゃーん! 死ぬなよ! るるちゃんのライブ、来月武道館であるんだろ?! なぁ!!」
富弥が泣き叫ぶが、鍋田は吐血しながら絶命した。
黒い布が鍋田の遺体にかけられた時、時雄が言った。
「とんだクズ野郎だ。死んで当然だ」
時雄は権野の側近的存在だったが、その表情には一抹の疲労も滲んでいた。
「……時雄、やりすぎだろ」
権野が呟くと、その場の空気はさらに重くなった。
その静寂を破ったのはレナミだった。彼女は冷たい目で信成子を睨みつけ、突然彼女の首を掴むと笑いながら言った。
「時雄……あんた、身内のクズ野郎を見抜けないの?」
「えっ、えっ……なになに……?」
信成子は戸惑いと恐怖で声を震わせるが、レナミの手は離れない。場は再び緊張に包まれた。