短い木刀を振りかざして雫の頭を叩きつけたのは、剣道有段者の椿華子だった。その一撃に雫は膝から崩れ落ち、カッターを手放した。
「華子……なんで?」
雫は苦しげに顔を歪めながら華子を見上げる。頭からは血が流れていた。
普段は控えめで目立たない存在の華子だったが、その目は普段よりも鋭かった。
「あなたが部長だからよ、雫。ずっと自分の正しさを押し付けて、みんなを支配しようとしてた。その結果がこれ……」
木刀を握りしめたままの華子の声は静かだったが、その中に強い怒りが感じられた。
雫は震える声で反論しようとする。
「私は……ただ部長として、みんなを守りたかっただけなの……」
しかし華子はその言葉を聞き流すように続けた。
「守りたいなら、まずは自分のやり方が正しいかどうか見直すべきだったね。でも……もう遅いよ、雫」
教室内は完全に凍りついていた。梨々花は布に被さった星華の亡骸を抱きしめたまま泣きじゃくり
「もう勝ち残ってもひーくんも星華もいないなんて! そんなの嫌っ!!!!」
自分のナップサックに入ってたフルーツカッターで首を自ら切った。
「梨々花!!!」
梨々花は星華の上に倒れ込み
「……だあいおあかたあながわさがががが」
何ともいえない声を出して絶命、それと同時に布被せられた。
ハルキや真威人も動けずにただ状況を見つめていた。
華子は木刀をそっと床に置き、ため息をついてその場に腰を下ろした。そして震える雫を冷たい目で見つめながら言葉を続けた。
「これ以上、無意味な争いはやめよう。部長として……本当はそれをあなたが言うべきだった。」
その言葉に、雫はただ目を伏せるしかなかった。
「華子……」
雫はその言葉を最後に倒れた。そして兵士たちに黒い布をかけられた。
「こんなゲーム、みんなで終わらせるべきだよ……」
華子がそう話し教室は静まり返った。
それに同調するようにハルキは震える手を隠しながら、思い切って口を開いた。
「……そうだよ、助かる方法、絶対あるよ」
普段は発言を控えがちな彼が絞り出した声に、部員たちが一瞬こちらを振り返る。
「珍しくお前喋るじゃん」
「ハルキくん、こういう場平気なのかい?」
権野や塩谷時雄が茶化すように言うが、ハルキはそれでも引かなかった。
「 今、殺し合いせずに全員でここから出る方法を探さないと……」
スダは黙ってみているだけだ。ヒントは与えてくれなさそうだ。