以上がHの死に関するインタビューのテープ起こしだ。
U美とMについてはプライバシー保護のため、詳細な情報は出せない。ごく普通の女子高校生だった、とだけ言っておこう。
気になるのはテープにところどころ、ノイズ混じりの雑音が入っていることだ。無料のAIアプリを使って文字起こししたところ、前途のように記録された。
文字の部分は私の耳でも辛うじて聞き取れた部分で、AIが起こした通りに聞こえたため、そのまま採用した。……は◎や○などの記号で起こされた部分で、意味不明だったため便宜上、三点リードに置き換えた。
取材は喫茶店で行ったので、おそらく隣か後ろのテーブルの会話を拾ってしまったのだろう。だがなんとなく気になったので、文字起こしの際に残すことにした。ノイズの声は高かったり低かったり、機械混じりのざらざらした音声だった。
インタビューしていて、U美はともかく、Mの様子が気にかかった。同級生が無残な死に方をした。ということを差し引いても、様子がおかしかったのだ。
時々目の焦点を失ったり、きょろきょろと周囲を窺ったり、耳を塞いだり、とにかく落ち着かない様子だった。最後は半ば怒って出て行ってしまい、その後はいくら連絡しても拒否された。
U美のグループにはあと二人いたが、どちらも取材には応じてくれなかった。学校側が出てきて「これ以上は生徒に接触しないように」と注意を受けたので、取材はここまでだ。
次に私はR子が通っていると思われる某私立高校を訪ねた。作家としての名刺を出し、小説を書くための取材と言って、吹奏楽部の部室に案内してもらった。
が、空振りに終わった。R子なる人物はいなかったのだ。
おそらく偽名を使っていたのだろう。ただ、妙なことにHの名前は本名だった。なぜ自分の名前や住所は伏せたのに、Hは実名だったのか。気にはなるが、死亡事故ともなれば新聞に掲載されるため、偽名を使う意味が無いと判断したのだと考えれば、一応の説明はつく。
とにかくR子とは会えなかった。ただ、吹奏楽部を取材したところ、部員八十一人中、一人欠席していることが分かった。彼女がR子で間違いないだろう。
事情を聞いたところ、お喋りな部員の一人が、少し前から精神を病み入院してしまったと話してくれた。理由を尋ねたが「友達が事故で死んだとかで、病んじゃったみたい」と、分かりきった答えが返ってきただけで、詳しい事情は誰も知らなかった。
吹奏楽部の活動の取材といいながら、欠席者についてばかり聞いたのでは不審に思われるだろう。数人から訝しげな視線が漂い始めたので、おためごかしに部活動についていくつか質問し、礼を言って学校を後にした。取材の内容を元にした青春小説については、出版社に没をくらえば本にはならない旨を伝えると、「そうなんですね~」くらいの反応で、悲しいかな、あまり期待されていないようだった。
さてこれからどうするか。
とことんHの事故について掘り下げてもいい。たとえばR子の家を特定して話を聞きにいったり、Hの親に会いに行ったりするのもありだ。
とはいえ、名も無いゴーストライターの私が訪ねても、これ以上取材をするのは難しいだろう。
それに私の目的はHの事故の真相を知ることではなく、白い女について調べることだ。ひとまずは帰って本の続きを読みつつ、オカルト板で、独自に白い女に関する情報提供を求めることにした。
ちなみにMのくれたURLだが、帰りの電車でアクセスしてみたところ「お探しのページは見つかりません」と出るばかりで、結局はなんの収穫もなかった。アドレスは一応、メモで残しておくことにした。
またオカルト板とは別に、エックスの捨てアカウントで
「秘密の動画らしい、見れた人、情報求む」
と呟いて、同アドレスを貼っておいた。
年齢不詳の多趣味な教養人に擬態して作ったアカウントで、様々なジャンルの人のアカウントをフォローしているので、フォロワー数はそこそこ多い。運がよければ、白い女かHの事故についての情報が得られるだろう。
では、そろそろNの『ある本』に話題を戻そう。
U美とMについてはプライバシー保護のため、詳細な情報は出せない。ごく普通の女子高校生だった、とだけ言っておこう。
気になるのはテープにところどころ、ノイズ混じりの雑音が入っていることだ。無料のAIアプリを使って文字起こししたところ、前途のように記録された。
文字の部分は私の耳でも辛うじて聞き取れた部分で、AIが起こした通りに聞こえたため、そのまま採用した。……は◎や○などの記号で起こされた部分で、意味不明だったため便宜上、三点リードに置き換えた。
取材は喫茶店で行ったので、おそらく隣か後ろのテーブルの会話を拾ってしまったのだろう。だがなんとなく気になったので、文字起こしの際に残すことにした。ノイズの声は高かったり低かったり、機械混じりのざらざらした音声だった。
インタビューしていて、U美はともかく、Mの様子が気にかかった。同級生が無残な死に方をした。ということを差し引いても、様子がおかしかったのだ。
時々目の焦点を失ったり、きょろきょろと周囲を窺ったり、耳を塞いだり、とにかく落ち着かない様子だった。最後は半ば怒って出て行ってしまい、その後はいくら連絡しても拒否された。
U美のグループにはあと二人いたが、どちらも取材には応じてくれなかった。学校側が出てきて「これ以上は生徒に接触しないように」と注意を受けたので、取材はここまでだ。
次に私はR子が通っていると思われる某私立高校を訪ねた。作家としての名刺を出し、小説を書くための取材と言って、吹奏楽部の部室に案内してもらった。
が、空振りに終わった。R子なる人物はいなかったのだ。
おそらく偽名を使っていたのだろう。ただ、妙なことにHの名前は本名だった。なぜ自分の名前や住所は伏せたのに、Hは実名だったのか。気にはなるが、死亡事故ともなれば新聞に掲載されるため、偽名を使う意味が無いと判断したのだと考えれば、一応の説明はつく。
とにかくR子とは会えなかった。ただ、吹奏楽部を取材したところ、部員八十一人中、一人欠席していることが分かった。彼女がR子で間違いないだろう。
事情を聞いたところ、お喋りな部員の一人が、少し前から精神を病み入院してしまったと話してくれた。理由を尋ねたが「友達が事故で死んだとかで、病んじゃったみたい」と、分かりきった答えが返ってきただけで、詳しい事情は誰も知らなかった。
吹奏楽部の活動の取材といいながら、欠席者についてばかり聞いたのでは不審に思われるだろう。数人から訝しげな視線が漂い始めたので、おためごかしに部活動についていくつか質問し、礼を言って学校を後にした。取材の内容を元にした青春小説については、出版社に没をくらえば本にはならない旨を伝えると、「そうなんですね~」くらいの反応で、悲しいかな、あまり期待されていないようだった。
さてこれからどうするか。
とことんHの事故について掘り下げてもいい。たとえばR子の家を特定して話を聞きにいったり、Hの親に会いに行ったりするのもありだ。
とはいえ、名も無いゴーストライターの私が訪ねても、これ以上取材をするのは難しいだろう。
それに私の目的はHの事故の真相を知ることではなく、白い女について調べることだ。ひとまずは帰って本の続きを読みつつ、オカルト板で、独自に白い女に関する情報提供を求めることにした。
ちなみにMのくれたURLだが、帰りの電車でアクセスしてみたところ「お探しのページは見つかりません」と出るばかりで、結局はなんの収穫もなかった。アドレスは一応、メモで残しておくことにした。
またオカルト板とは別に、エックスの捨てアカウントで
「秘密の動画らしい、見れた人、情報求む」
と呟いて、同アドレスを貼っておいた。
年齢不詳の多趣味な教養人に擬態して作ったアカウントで、様々なジャンルの人のアカウントをフォローしているので、フォロワー数はそこそこ多い。運がよければ、白い女かHの事故についての情報が得られるだろう。
では、そろそろNの『ある本』に話題を戻そう。