君の匂いを知っている




「わぁ、お兄ちゃんおかえり〜! もうクリームソーダ、溶けちゃってるよ〜」

 ビーチパラソルをくぐると、家から持ってきた転がれる折りたたみ式ハンモックの上にりさが座っていた。その隣に座っているのは見知らぬ男。

「りさ!?……と、誰?」

 昴が聞くと、その男はわざわざ立ち上がって丁寧に挨拶をした。「初めまして、りさと付き合ってます。夜凪(やなぎ)(ふう)と申します。お義兄さんと同い年です」

 穏やかそうで、少し不思議な雰囲気が漂っている。昴の目には風は、礼儀正しくて良い子に映った。
 それは間違いではなく、すぐに二人はりさの可愛さや良い子さを語り合って意気投合した。仲良くなるのは一瞬の事で、敬語は外れて呼び捨てで呼び合う仲になった。
 昴は風がりさの事をどれだけ大切に思っているかがわかって安心していた。
 もし、自分が居なくなっても助けになってくれる存在が、幸せにしてくれる人がりさにも出来たんだなぁと。

 それを見たりさと梛は昴の気持ちも知らずに社交的な二人に呆れた目を向けて、昴と風の話の熱が収まるまで、それぞれたこ焼きと焼きそばを食べていた。

 

 それと同時に、梛がこの二人と話していただけという事も理解してしまって恥ずかしさが再来。昴は頭を掻いて苦笑した。

「そういう事か、勘違いして損した……」

 一気に飲み干した、上に乗ったアイスが溶けてしまってやけに甘ったるい味になっていた。