想像の倍以上の速さで、あっという間に年月が過ぎていく事を実感した。

 はぁ、と吐いた息が白く空気に溶けていく。
 とうとう来年度からは受験生になるからと、最上(もがみ)(すばる)は暇さえあれば塾へ行って受験勉強に励んでいた。

 昴はクラスの中でそれなりに成績は良い方で、勉強でもスポーツでも、今まで困ったことは無かった。

——何もしなくても何でも出来てしまう天才型。それが最上昴という男。

 入学早々、容姿の良さからクラスメイトからチヤホヤされる。
 頼り甲斐があって、顔も良く、勉強も出来るとなると自然に支持されるようになり、二年間委員長に推薦された。

 学校では、優等生の委員長キャラでいる事で信頼と尊敬を集めている。家には二つ下の妹がいるせいか、面倒を見るのに慣れていて、よく泣きついてくる同級生や後輩の相談に乗っていた。

 頼られる事自体は悪くない。でも何度も何度も頼られると流石の昴でも「それぐらい自分で出来ねぇの?」と少し苛立ってくる。けれど、そんな事を口にすればきっと逆上されるか泣かれるか。面倒な未来が目に見えるから昴は敢えて優しく接する。

「……っはぁ、めんどくせ」

 昴は公園で苛立ちを吐き捨てた。