「え?」と、思わず足が止まった。
昴が食べ物を持って、場所取りをしてくれた梛の元へ行こうとした時の事だった。
誰だろう、知らない二人と楽しそうにしている梛……あの二人は好きだった人?元恋人?
そんなこと考えて、なんで俺はこんなにモヤモヤしてるんだろう。ただ、梛を助けるために咄嗟に思いついた表面上の恋人なのに。
何でこんな気持ちになるんだろう。
目を瞑って、ぶんぶんと首を振って昴は無理矢理明るい顔を作った。そのまま、ビーチパラソルの下に入る。
無理矢理テンションを上げて笑うのは比較的得意な方だった。自分を偽っておけば空気を壊してしまうこともないとわかっている時は、必ずその選択をする。
「梛、買ってきたよ。場所取りありがと」とテーブルに紙袋とクリームソーダを置く。すると、嬉々とした梛が話しかけてくる。
「昴! ありがと!……聞いてよ、さっき偶然会ったんだけどさ!」
いつもなら、笑って対応できるはずなのに今は出来なかった。上手く笑えなかった。頷く事も出来なかった。苛立ちと悲しみが混ざって、自分でもよくわからない嫌な感情があふれていた。
自分の本音に気付いてしまった。
——あぁ、俺梛の事好きなんだ。と。
「ごめん、俺ちょっと聞きたくないかも。」
「え……?」
梛を置いて、昴は逃げ出した。知り合いがいるなら大丈夫だと思っていた。



