「お掃除ロボット! もう大丈夫だよ、こっちに来て!」

 俺はウィンスを倒す準備を終えて、二階のエスカレーターの上から、ウィンスを足止めしているお掃除ロボットを呼んだ。

すると、お掃除ロボットは俺の声に反応して空を飛んで俺のもとに戻ってきた。

 ちらっとウィンスを見ると、ウィンスは肩で息をしながら俺を睨んでいた。どうやら、お掃除ロボットが結構ウィンスの体力を削ってくれたらしい。

「はぁ、はぁ! いつまでもゴーレムどもに相手をさせやがって! 待っていろ、今すぐにおまえの首を斬ってやる!」

 ウィンスはそう言うと、上りエスカレーターに足を掛けた。

 躊躇することなく足を置いたのは、エスカレーターをただの階段か何かだと勘違いしているのだろう。

まぁ、エスカレーターなんて知らないだろうし仕方がないか。

「うおっ、な、なんだこれ」

 それから、ウィンスはエスカレーターが動いたことに驚きの声を漏らしていた。自動で階段が動くということが信じられないのだろう。

 俺はウィンスが引き返せない所まで登ってきたのを確認して、そっとエスカレーターの手すりに手を置いた。

「『仕様変更』 超高速上りエスカレーターに変更」

 俺がそう言うと、カッとエスカレーターが光った。そして、次の瞬間エスカレーターが唸りを上げて拘束で動き出した。

「おおおおお!!」

 ウィンスは突然の事態に驚きながら踏ん張ろうとしていたが、踏ん張ろうとしてもエスカレーター事態が動いているのでどうすることもできるはずがない。

 俺はウィンスとぶつからないように、エスカレーターから離れてウィンスのみっともない姿を見ていた。

「うわああぁぁ!!」

 それから、一気に二階のフロアに投げ出されたウィンスは勢い余って、エスカレーター付近に設置しておいたマッサージ機に体をぶつけた。

 ピピッ。

 すると、すぐにマッサージ機の起動音が鳴った。

……どうやら、上手くいったみたいだ。

「ぐわっ!! な、なんだったんだ、あれは」

 ウィンスは上りエスカレーターを見ながらマッサージ機から立ち上がろうとするが、上手く体を起こすことができなくなっていた。

「ん? なんだ、これは」

 ようやく、異変に気づいたようだがすでに遅い。

ウィンスは両手両足を固定されてしまい、全く動くことができなくなっていた。

「なんで拘束されてんだ! これは何なんだよ!」

「もとはただのマッサージ機ですよ。まぁ、今は俺が拘束椅子に仕様変更したものですけどね」

 俺はマッサージ機の上で体を必死に動かすが、全然動かせないウィンスを見ながら、ウィンスの体にペタペタとあるものを張っていく。

「お、おい! 今度は何する気だ!」

「少しの間気を失ってもらおうと思いまして。その準備ですね」

 俺はそう言いながら、数個の低周波治療器のパットをウィンスの体のいたる所に張っていった。

 もちろん、すでに仕様変更済みで、人が気を失うレベルまで電気の量を上げている。

「や、やめろ! 変なものを体に張り付けるな!」

 俺は体を揺らしながら叫ぶウィンスの声を無視して、全てのパットを張り付けて数個ある低周波治療器をまとめて手に持った。

「前に後ろから俺を襲って気を失わせたでしょ。そのときのお返しですよ。多分、死にはしないので」

「や、やめっーー」

 俺は恐怖で歪んだウィンスの顔に笑みを返してから、一気に数個の低周波治療器のスイッチを入れて最大の電気量を流した。

バチッ、バチチチッ!!

「アガガガがガガガッ!!」

 そして、ウィンスは感電でもしたかのように電気を食らって、体を痙攣させながら叫んでいた。

 それから、俺はしばらくし電流を流して、ウィンスが白目を向いたのを確認してから、低周波治療器を止めた。

「……死んではないよね?」

 念のために脈をとって、ウィンスが生きていることを確認してから、俺はウィンスをマッサージ機からとある場所に移動させることにした。

 ただ気を失わせただけでは、またいつ襲ってくるか分からない。

 やるなら、トラウマ級のダメージを与えてあげなければ。

 俺はそんなことを考えてウィンスを運んでから、ラキスト兄さんにも低周波治療器を持っていって食らわせることにしたのだった。