「じゃーん、ここが私の秘密のお部屋でーす!」

 カグヤはそう言うと、監視室と書かれた扉の部屋を開けた。

 監視室にはいくつもの液晶があり、『家電量販店』にある監視カメラの映像が流れていた。

 他にはパソコンやキーボードと、離れた所に椅子が数個投げ出されているだけで、生活感がまるで感じられなかった。

「カグヤがずっといた場所ってここだったのか。まさか、こんな奥まったところにこんな部屋があったなんて」

俺は自分の知らない部屋があったことに驚きを隠せずにいた。すると、アリスも俺と小名異常に辺りを見渡して目をぱちぱちとしている。

「私も初めて入りました。『家電量販店』にある部屋とかはすべて把握していたつもりだったのですけど」

 俺たちの会話を聞いたカグヤは、眉を下げて小さく笑う。

「まぁ、フロアマップにも載ってないし、気づかれにくい所にある部屋なんだと思うよ。多分、私が会いに行かなかったらご主人様とも――けふんけふんっ!」

 カグヤは途中まで言いかけた言葉を無理やり咳ばらいでかき消した。

 顔を赤くしている所を見ると、また言いたくない言葉を言おうとしてしまったのかもしれない。

 俺はそれ以上のことを追求しないようにして、辺りを見渡す。

「えっと、ここに土とか肥料があるんだっけ? そんなふうには見えないんだけど」

「うん。ここにはないよ。でも、ここから頼むことができるんだよ」

 カグヤはそう言うと、放り投げていた椅子を2個パソコンの前に持ってきて、片方に座った。カグヤが空いている椅子をとんとんっと叩いたので、俺はカグヤの隣に腰かける。

 俺が座ったのを確かめてから、正面にあるパソコンを操作して画面を指さした。

「ほら、ご主人様。土とか肥料はここにあるの」

「え、本当だ。なんか通販サイトみたいになってるんだな」

 パソコンには家電量販店の通販サイトのような画面が映し出されていた。

 そういえば、最近の『家電量販店』って通販サイトで色んなものを売っていたりする。この『家電量販店』ってギフトはその通販サイトからも物を頼めるのか。

「ここら辺を適当に頼んでおいていいのなら、私の方で適当に発注しておこうか?」

「うん。お願いしそうかな。土地だけは結構あるし、多めにお願い」

 そもそも、この地で農業をして農作物が取れるかどうか分からないと、それを基に財源を作れるかどうかも分からない。

 土も肥料もあるのなら、まずは『家電量販店』の土と肥料を使って農作物が取れるか確かめる必要があるだろう。

「了解。余ってもいいくらいに頼んでおくね」

 カグヤはそう言うと、手早くパソコンを操作して発注をしてくれた。操作が手馴れている所を見ると、これまで多くの物を発注してくれていたのだろう。

 ……もっとカグヤには感謝しないとだよな。

 俺がそう考えていると、カグヤは椅子からぴょんっと下りてぐっと背伸びをした。

「よっしと。これで完了。それじゃあ、土と肥料はこれで大丈夫だから――」

 カグヤが勢いよく飛び降りたせいか、舞い上がったカグヤのスカートがガッと椅子に引っかかってしまった。

 そして、捲れ上がってしまったスカートから、カグヤの白くて健康的な太ももが露になった。

「……み、見られてる。見られたらダメな所を見られて――っ」

 すると、カグヤは顔を赤くして息を荒くし始めた。そして、なぜかスカートの裾を直そうとしているはずなのに、裾がどんどんと捲り上げられていく。

 一体、何をどうしたらそんなふうになるんだ?

 俺がそう考えていると、慌てたようにやってきたアリスが俺の正面に座って、両肩に手を置いてじっと俺を見つめてきた。

「旦那様。それでは、今度は耕運機の方を見に行きましょうか」

「え、あっ、うん。そうだね」

 俺はカグヤの太ももを見てしまっていた視線をアリスに向ける。しかし、アリスが直立したところから膝を曲げて座ったせいか、今度はアリスのパンツが見えそうになって俺は慌てて視線を逸らす。

「旦那様? あっ……旦那様ぁ」

 すると、今度はアリスが微かに息を荒くし始めた。俺はアリスに向けられ続ける視線に耐えかねて、アリスに肩に置かれた両手をすり抜けて一人扉の方へと向かう。

「ほら、耕運機の方も準備しないとだから、早く行くよ」

 俺がそう言うと、アリスとカグヤはハッとして恍惚としていた表情からいつもの表情へと戻ったみたいだった。

「旦那様、お待ちください!」「ご主人様、待ってよー!」

 俺は二人がいつもの様子に戻ったのを確認してから、一足先に耕運機売り場へと向かうのだった。