◆
男子寮地下室。
学生服を着た二人の男が暗闇の中、小声で話をしている。
「深、どうだ?」
「今のところ何も」
「そうか」
「でもわざわざあの図書館に毎晩行くなんて、不気味ですよ。
あそこは夜になると妖の溜まり場でしょう」
「そうだな。でも死人が見てきた妖だ。そいつらも死んだと同然で害はない」
妖。
それは知る人ぞ知る不気味な怪物のことである。
「見た目は変わりませんけどね」
「いずれ消えるさ。そしたらまた新しいのが来るけど」
一人の人間につき一体の妖が憑いている。
人間の身体の10倍はあろうか巨大な黒い塊に靄がかかったような形態で、
赤く光る3つの瞳がその者を睨みつけ、飲み込もうとする。
そしてそれは不幸な者にほど見えてしまう。
妖は子どもの頃に見やすいものとされ、一度見てしまうと何度も何度も襲われる。
大人になるまで目にすることがなければ、その後一切見ずに生涯を終えるが、
見える者には他人の妖さえも見える。
つまり、妖を見る者、見ない者に、人は幼少期のうちにわけられてしまうのだ。
現在の研究でわかっているのはここまでだ。
妖を見る人の数、見える原因についてもまだ研究は進んでいない。
「なぜあそこにあんなに集まるんでしょうか」
「医学校だからな。授業で扱う遺体が多い場所だ。つまり死んだ人の見てきた妖がここには多いんだ」
「はあ…」
深は気味悪さにため息をついた。
「ははは、怖いか。じゃあお前が彼女を守ってやらないとな」
「わかってます。私の任務です」
「おお、やる気。彼女を好きになったんじゃ?」
「ないですよ。やめてください」
「まあよろしく頼むよ。友人の可愛い妹なんだ」
秘密結社カナリアの目的は人々を妖から守ること。
構成員がそれぞれ所持する妖専用の拳銃で、妖を撃退する。
これがこの医学校に水面下で蔓延るカナリアの正体だ。
幼少期に、黒い靄を見る側とされた者。
そしてそれを妖であると知る者たちの団体である。
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男子寮地下室。
学生服を着た二人の男が暗闇の中、小声で話をしている。
「深、どうだ?」
「今のところ何も」
「そうか」
「でもわざわざあの図書館に毎晩行くなんて、不気味ですよ。
あそこは夜になると妖の溜まり場でしょう」
「そうだな。でも死人が見てきた妖だ。そいつらも死んだと同然で害はない」
妖。
それは知る人ぞ知る不気味な怪物のことである。
「見た目は変わりませんけどね」
「いずれ消えるさ。そしたらまた新しいのが来るけど」
一人の人間につき一体の妖が憑いている。
人間の身体の10倍はあろうか巨大な黒い塊に靄がかかったような形態で、
赤く光る3つの瞳がその者を睨みつけ、飲み込もうとする。
そしてそれは不幸な者にほど見えてしまう。
妖は子どもの頃に見やすいものとされ、一度見てしまうと何度も何度も襲われる。
大人になるまで目にすることがなければ、その後一切見ずに生涯を終えるが、
見える者には他人の妖さえも見える。
つまり、妖を見る者、見ない者に、人は幼少期のうちにわけられてしまうのだ。
現在の研究でわかっているのはここまでだ。
妖を見る人の数、見える原因についてもまだ研究は進んでいない。
「なぜあそこにあんなに集まるんでしょうか」
「医学校だからな。授業で扱う遺体が多い場所だ。つまり死んだ人の見てきた妖がここには多いんだ」
「はあ…」
深は気味悪さにため息をついた。
「ははは、怖いか。じゃあお前が彼女を守ってやらないとな」
「わかってます。私の任務です」
「おお、やる気。彼女を好きになったんじゃ?」
「ないですよ。やめてください」
「まあよろしく頼むよ。友人の可愛い妹なんだ」
秘密結社カナリアの目的は人々を妖から守ること。
構成員がそれぞれ所持する妖専用の拳銃で、妖を撃退する。
これがこの医学校に水面下で蔓延るカナリアの正体だ。
幼少期に、黒い靄を見る側とされた者。
そしてそれを妖であると知る者たちの団体である。
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