「楓子。手紙受け取ったよ。嬉しかった。ありがとう」

「兄さん。久しぶりね」

店に入ると、早速楓子の兄が店頭で待っていた。
血は繋がっていないが、楓子によく似た笑顔で出迎えられる。

「はじめまして。楓子の兄の一郎(いちろう)です。これ、どうぞ」

店の定番商品だというおはぎの乗った皿を受け取り、
深と楓子は二人店内にある椅子に腰掛けた。

「口紅が取れてしまうわ」

食べようと手に取った楓子が隣に座る深に耳打ちをする。

「また塗ってあげますから」

深のその言葉を聞いて安心したのか、楓子は大きな口でおはぎにかぶりつく。

一郎は、妹と妹と共に来た男の様子を眺めていた。

「君が…そうか。ありがとう」

二人の関係を全て理解し納得したように、一郎は深を見つめた。

「うちの会長とご友人なんですよね」

「ああそうなんだ。その縁でお願いしたことだったんだよ」

楓子と深がおはぎの最後の一口を食べ終える。

それを見届けた一郎は、店の厨房にいる父親に店番を託し、二人に向き直った。

「少し歩きながら話そう」