彼女は、俺の言葉を聞いてバッと振り返って笑いかけてくる。
「なんでそんなに笑うんだ?」
なんとなく思った疑問を口にする。
それを聞いた水李は、顔を赤らめて口をごにょごにょしながら言う。
「名前、呼んでくれたから」
「そんなことで?」
「だって、私って村の人たちから嫌われてるでしょ?だから、呼ばれないと思ってた」
水李が言った言葉が胸にグサッとナイフみたいに刺さる。
(この言葉で傷つくのは水李のはずなのに、なんでこんなに胸がいたいんだ?)
「俺は、別に水李のことは嫌いじゃないよ」
「ホント?」
水李に視線を向けると、水李は今にも泣きそうに顔を歪めていた。
「あ、ああ」
「そっか」
水李は、俺が頷くと少し切なそうに笑い前を向いて歩き続ける。