「あの・・・、離してくれません?」
水李が俺の腕の中から顔を出し、顔を赤らめている。
「えー、いやだ」
俺はニコッと水李に笑いかける。
「依さん、なんか最近意地悪になりましたか?」
「ん?どーだろうね」
腕の中にいる彼女の頭を撫でながら、頭では違うことを考えていた。
『もう少しで水李様の誕生日なんですよ』
その言葉を聞いたのは、数日前だった。
伊津夏が教えてくれなければ、知ることもなかった。
水李は自分のことを滅多に話さない。
だから、伊津夏からの情報はありがたい。
そして、今日が水李の誕生日なのだ。
だから、俺がこうしている間にも伊津夏がケーキを作ってくれている。
そして、この後俺が水李と買い物へ行っている間に部屋の飾りつけをしてもらう予定。
出かける支度をしないといけないけど、水李が可愛すぎて腕の中から離してやれていない。