「先生のときもやったんだ」
「やったやった。隣村の長男に振られたあと病気で亡くなったのよね」

「マンガだったら絶対にざまああり展開で転生かループよね!」
「そうだね」
 花楓は苦笑し、ふと思い付く。

「社会科を楽しく勉強するには漫画とか小説を読むのがいいかもね」
「そうなの?」
 結愛は不思議そうに花楓を見る。

「物語が面白かったら舞台になった場所にも興味が出るじゃない? 歴史だったらその時代に興味が出るだろうし」
「だけど高くて買えない。図書室の本なんて面白いのないし」
「数も少ないもんねえ」
 小学校の図書室に置かれている本は大人が子供に読ませたい本であることが多く、子どもが読みたい本とは相違がある。

 かといってお小遣いはたかが知れているし、子どもが欲しいものはこの世の中にたくさんありすぎて、予算を本に回す余裕などないように思われる。
 実際、自分の子ども時代を思い出してもそうだった。たまにスーパーに連れて行ってもらったときには握りしめた硬貨とお菓子を見比べて真剣に悩み、本を買う余裕などなかった。

 村に図書館はない。隣の市や町の図書館で借りることはできるが、子どもでは交通手段がなくて気軽に借りに行けない。
 さらに、結愛はまだスマホを持っていないから電子書籍も無理だ。中学に入ったら買ってもらえるらしく、そのときを楽しみにしているという。