君という花が、真夜中で咲くときに

「そ、じゃあ俺んち、行きますか~」
そう言って、手を差し伸べてくる。
私は、それを無視して前を向く。
「早くいこうよ」
想羽は、差し出した手をチラッと見てから、私の顔を見る。
「な、なに?」
うるさい想羽が静かだと少し気味が悪い。
「いや、初めて無視されたなって思って」
「えっ、いつもやってるの?」
「まあね」
想羽は、少し困ったように笑う。
まただ。たまに、想羽は困ったように笑う。なんでだろうとは思う。
だけど、そこまで興味があるわけではないから、そこは無視しよう。
「で、どこにあるの?」
「えっとね、この近くの駅から電車で一時間行ったところ」
「は?」
一時間?私の元の家より遠いじゃん。
「なんで、こんなところに来ているの?」
「たまたまね、公園で一人少女がいたら、声をかけるだろ」
私なら、絶対にかかわりたくないから声をかけないけど。
やっぱり、想羽は変わっている。
「たまに思うけど、陽って結構毒舌というか」
「えっ、声に出てた?」
「うん」
うそでしょ。心の中で言っているつもりだったんだけどな。まさか、声に出ているとは思わなかった。
なんてい言えばいいんだろう。視線を下に向ける。そこには、汚れていて使いまわされた靴が視界に入った。
『お前に、買ってやる靴なんてないんだよッ』
お父さんが、手を振りかざす。
ッ・・・、いやッ!殴られる・・・!
「・・・、お・・・、い」
「おい、大丈夫か?」
「ッ」
あっ、そうだ。ここは家じゃない
「ご、ごめん」
嫌なことを思い出した。思い出したくな記憶。なんで、思い出しちゃったんだろう?
「いや・・・、大丈夫なら別」
あんなに怖がっていたんだ、私って。最近では、慣れたけどやっぱり初めの恐怖は残っている。
感情なんて残ってるとは、思わなかった。いや、残ってないや。
これは、過去の記憶や感情であって今の記憶ではないのだから。