せつなの問いを耳にした優の目からは、大粒の涙が零れ落ちる。
「だって、そんなの当たり前じゃない。時間がないって……それって」
「うん。そうだね。二人とはお別れってこと」
「そ、そんな。なんで? どうして? せっかく友達になれたのに。そんなの嫌だよ」
本格的に泣き出した優は、まるで駄々っ子のようにせつなの手を握りしめてイヤイヤと頭を横に振る。その横で浩志は顔を歪め、口を真一文字に結んでいる。その顔は、まるでせつなの言葉を拒んでいるようだ。
「せつなだって、二人と別れるのは嫌だよ」
そう言ったせつなの表情は、当に現実を受け入れているのか冷静さが伺える。いつもの幼さは鳴りを潜め、その顔は幾分大人びていた。
「二人は、せつなの想いを覚えてる?」
現実を受け入れまいと拒む二人に、せつなは淡々と語り掛ける。そんなせつなの問いに、浩志は引き結んでいた口を少し開く。
「……姉ちゃんと……花を見る」
「ふふ。そう。そうなんだよね。お姉ちゃんに、せつなの存在をなかなか知ってもらえなくて、これまでずっとここに居たけれど、二人のおかげで、ようやくお姉ちゃんと気持ちを通わすことができたんだ」
せつなの清々しそうな声をかき消すように、浩志は声をあげる。
「でも! でも、まだ花が咲いてないじゃないか。ほら! そこの花壇、まだ全然咲いてない……」
「そうよ! 花が咲くまでもう少し時間があるじゃない」
優も涙声でせつなに必死で訴える。
「うん。そうだね。この花がなかなか咲いてくれないのは残念だけど……二人が今日、せつなの代わりにスターチスの花束をお姉ちゃんにくれたでしょ?」
せつなの声は、とても嬉しそうに弾んでいる。
「せつなは、それで十分満足しちゃったんだよ。ああ、スターチスを見て、お姉ちゃんが喜んでくれてるって」
「そんな……じゃあ、私のせいなの? せつなさんとのお別れは、私が引き起こしたの……」
項垂れて大粒の涙を地面に落とす優を、せつなは愛おしそうに抱きしめる。
「そうじゃないよ。優ちゃんはせつなを開放してくれたの。長い間、自分の想いに縛られていたせつなの心を、やっと自由にしてくれたんだよ」
「でも……だからって、お別れなんて……」
聞き分けなくせつなの腕の中で首を振る優の背中を優しく撫でながら、せつなは浩志に目を向ける。
「成瀬くんもありがとう。成瀬くんがせつなに気がついてくれたことが、そもそもの始まりだもんね。せつなを見つけてくれてありがとう」
「だって、そんなの当たり前じゃない。時間がないって……それって」
「うん。そうだね。二人とはお別れってこと」
「そ、そんな。なんで? どうして? せっかく友達になれたのに。そんなの嫌だよ」
本格的に泣き出した優は、まるで駄々っ子のようにせつなの手を握りしめてイヤイヤと頭を横に振る。その横で浩志は顔を歪め、口を真一文字に結んでいる。その顔は、まるでせつなの言葉を拒んでいるようだ。
「せつなだって、二人と別れるのは嫌だよ」
そう言ったせつなの表情は、当に現実を受け入れているのか冷静さが伺える。いつもの幼さは鳴りを潜め、その顔は幾分大人びていた。
「二人は、せつなの想いを覚えてる?」
現実を受け入れまいと拒む二人に、せつなは淡々と語り掛ける。そんなせつなの問いに、浩志は引き結んでいた口を少し開く。
「……姉ちゃんと……花を見る」
「ふふ。そう。そうなんだよね。お姉ちゃんに、せつなの存在をなかなか知ってもらえなくて、これまでずっとここに居たけれど、二人のおかげで、ようやくお姉ちゃんと気持ちを通わすことができたんだ」
せつなの清々しそうな声をかき消すように、浩志は声をあげる。
「でも! でも、まだ花が咲いてないじゃないか。ほら! そこの花壇、まだ全然咲いてない……」
「そうよ! 花が咲くまでもう少し時間があるじゃない」
優も涙声でせつなに必死で訴える。
「うん。そうだね。この花がなかなか咲いてくれないのは残念だけど……二人が今日、せつなの代わりにスターチスの花束をお姉ちゃんにくれたでしょ?」
せつなの声は、とても嬉しそうに弾んでいる。
「せつなは、それで十分満足しちゃったんだよ。ああ、スターチスを見て、お姉ちゃんが喜んでくれてるって」
「そんな……じゃあ、私のせいなの? せつなさんとのお別れは、私が引き起こしたの……」
項垂れて大粒の涙を地面に落とす優を、せつなは愛おしそうに抱きしめる。
「そうじゃないよ。優ちゃんはせつなを開放してくれたの。長い間、自分の想いに縛られていたせつなの心を、やっと自由にしてくれたんだよ」
「でも……だからって、お別れなんて……」
聞き分けなくせつなの腕の中で首を振る優の背中を優しく撫でながら、せつなは浩志に目を向ける。
「成瀬くんもありがとう。成瀬くんがせつなに気がついてくれたことが、そもそもの始まりだもんね。せつなを見つけてくれてありがとう」



