浩志と優に真剣な眼差しを向けられた上級生は、しばし瞬きを繰り返した後、虚空へと視線を向け、先ほどと同じようにまるで誰かの話を聞いているような動きをしてから、浩志と優に向き直った。
「二人が素直な心の持ち主で嬉しいよ。だから、せつなちゃんと交流が持てたんだね」
上級生は嬉しそうに笑みを見せ、慈しむように一瞬せつなへ視線を向けた後、言葉を続けた。
「私は、別にココロノカケラについて詳しいわけじゃないんだ。ただ、他の人よりも少しだけ不思議な存在について知っているだけ」
「それでも、私たちよりは知っているってことですよね?」
優の必死な声に上級生は静かに頷く。
「そうだね。きみ達よりは知っているよ。『きみ達に』というよりも、せつなちゃんにもう時間がないこともね」
「それ、さっきも言ってたよな? 一体どういうことなんだ? 時間がないって……そんなのまるで……」
浩志はその先を口にしたくないという風に頭を振り、俯いてしまう。そんな浩志に、上級生は淡々と言葉を投げる。
「時間がないというのは、言葉の通りだよ。ココロノカケラは、強い思いがこの地に残って形を成しているものなんだ。だから、その思いが遂げられれば、ココロノカケラは無に還ることになる」
「……そんな……」
上級生の言葉に優は思わず息を飲んだ。そして、そこから声を零してしまわないように口元を手で覆った。
「でも、きみ達だって本当は分かっていたんじゃない? いつかは別れの時が来るってこと。それに、せつなちゃんはもうその時が近いことを悟っているよ」
そう言われて、二人は思わずせつなの姿を探す。先ほどまで、緑の絨毯を無邪気に眺めていたはずのせつなは、いつの間にか、浩志と優をしっかりと見つめ、寂しそうな笑みを浮かべていた。
「せ、せつな、どういうことだ? 時間がないって?」
浩志は声を震わせる。その場の空気を少しでも乱したら少女が消えてしまうとでも思っているのか、ソロリとせつなに近づいていく。そんな浩志の制服の裾をいつの間にか掴んでいた優は、自身の意思などどこかに落としてしまったのか、浩志の後ろをただ呆然と引きずられるようにしてついて来ていた。
「成瀬くん、落ち着いて。ほら、優ちゃんもしっかりして」
「……だって、せつなさん……」
優の目には、涙がこんもりと盛り上がっていた。それをせつなは指先で拭い取ってあげながら、優の目を覗き込む。
「ねぇ、どうして優ちゃんは泣いているの?」
「二人が素直な心の持ち主で嬉しいよ。だから、せつなちゃんと交流が持てたんだね」
上級生は嬉しそうに笑みを見せ、慈しむように一瞬せつなへ視線を向けた後、言葉を続けた。
「私は、別にココロノカケラについて詳しいわけじゃないんだ。ただ、他の人よりも少しだけ不思議な存在について知っているだけ」
「それでも、私たちよりは知っているってことですよね?」
優の必死な声に上級生は静かに頷く。
「そうだね。きみ達よりは知っているよ。『きみ達に』というよりも、せつなちゃんにもう時間がないこともね」
「それ、さっきも言ってたよな? 一体どういうことなんだ? 時間がないって……そんなのまるで……」
浩志はその先を口にしたくないという風に頭を振り、俯いてしまう。そんな浩志に、上級生は淡々と言葉を投げる。
「時間がないというのは、言葉の通りだよ。ココロノカケラは、強い思いがこの地に残って形を成しているものなんだ。だから、その思いが遂げられれば、ココロノカケラは無に還ることになる」
「……そんな……」
上級生の言葉に優は思わず息を飲んだ。そして、そこから声を零してしまわないように口元を手で覆った。
「でも、きみ達だって本当は分かっていたんじゃない? いつかは別れの時が来るってこと。それに、せつなちゃんはもうその時が近いことを悟っているよ」
そう言われて、二人は思わずせつなの姿を探す。先ほどまで、緑の絨毯を無邪気に眺めていたはずのせつなは、いつの間にか、浩志と優をしっかりと見つめ、寂しそうな笑みを浮かべていた。
「せ、せつな、どういうことだ? 時間がないって?」
浩志は声を震わせる。その場の空気を少しでも乱したら少女が消えてしまうとでも思っているのか、ソロリとせつなに近づいていく。そんな浩志の制服の裾をいつの間にか掴んでいた優は、自身の意思などどこかに落としてしまったのか、浩志の後ろをただ呆然と引きずられるようにしてついて来ていた。
「成瀬くん、落ち着いて。ほら、優ちゃんもしっかりして」
「……だって、せつなさん……」
優の目には、涙がこんもりと盛り上がっていた。それをせつなは指先で拭い取ってあげながら、優の目を覗き込む。
「ねぇ、どうして優ちゃんは泣いているの?」



