籠に手をかけた二人は、司会の「そ〜れっ」という掛け声に合わせて個包装された小さめのお菓子を舞台下の生徒たちに投げる。生徒たちはそのお菓子に向かって年甲斐もなく手を伸ばし大はしゃぎだ。浩志たちもその波に揉まれながら、その場の雰囲気を楽しむ。
「ケーキじゃなくても、結構大盤振る舞いだな」
「これ、小石川先生の寄付よ」
「へ〜、なかなかやるな。こいちゃん」
「俊ちゃん、お姉ちゃんたちのためにかなり協力してくれたのね」
優の種明かしに、浩志とせつなは感心仕切りだった。
次第に生徒たちは自ら菓子を呼び込むようになり、壇上の二人はそれに応える形で近くへ遠くへと菓子を投げ、籠の中身がすっかりなくなると「初めての共同作業」企画は終わりとなった。それぞれの生徒が戦利品を手に、各自のテーブルへと引き返す中、優は浩志にだけ聞こえる様に小さな声で囁いた。
「成瀬、次よ」
その声に無言で頷いた浩志は、自分たちのテーブルへ戻ると手にした菓子を机に山積みにしてから、なるべく自然を装ってボソリと呟いた。
「ちょっと、トイレ」
せつなは余程パーティーを楽しんでいるのか、浩志の言葉に「うん」と答えたものの目は前方を向いている。そんなせつなの様子を見つつ、優はジェスチャーで浩志を追い立てた。
せつなが関心を寄せる前方の方では、司会が次の余興を発表していた。次は先日優が浩志に話していた『生徒から先生へ一言』。前の方のテーブルから順に壇上へ上がるよう司会から指示が出されて、生徒が移動を始めた。生徒たちが移動をする間にできた少しの空白時間に、せつなは辺りをキョロキョロと見回し浩志がいない事に改めて気がついた。
「あれ? 成瀬くんは?」
不思議そうに問うせつなに、優はしれっと答える。
「あ〜、なんかトイレだって」
「ふ〜ん。早く戻ってこないかしら」
せつなは、司会に促され徐々に伸び始めた生徒の列を見遣る。
「優ちゃんたちも、あの列に参加するのよね?」
どことなく緊張気味に問うせつなに、優は大きく頷く。
「もちろん!」
「あ、あのね……私も一緒に行っていいかな? たとえお姉ちゃんに気が付かれなくても、近くできちんとお祝いを言いたいの」
せつなは懇願するように胸の前で手を組み、いつか浩志にやったようにお願いポーズを取る。それは、男子の心だけではなく女子の心をも掴む威力があった。せつながとても可愛らしく優の目には映る。
「当たり前だよ! もとから一緒に行くつもり!」
「ケーキじゃなくても、結構大盤振る舞いだな」
「これ、小石川先生の寄付よ」
「へ〜、なかなかやるな。こいちゃん」
「俊ちゃん、お姉ちゃんたちのためにかなり協力してくれたのね」
優の種明かしに、浩志とせつなは感心仕切りだった。
次第に生徒たちは自ら菓子を呼び込むようになり、壇上の二人はそれに応える形で近くへ遠くへと菓子を投げ、籠の中身がすっかりなくなると「初めての共同作業」企画は終わりとなった。それぞれの生徒が戦利品を手に、各自のテーブルへと引き返す中、優は浩志にだけ聞こえる様に小さな声で囁いた。
「成瀬、次よ」
その声に無言で頷いた浩志は、自分たちのテーブルへ戻ると手にした菓子を机に山積みにしてから、なるべく自然を装ってボソリと呟いた。
「ちょっと、トイレ」
せつなは余程パーティーを楽しんでいるのか、浩志の言葉に「うん」と答えたものの目は前方を向いている。そんなせつなの様子を見つつ、優はジェスチャーで浩志を追い立てた。
せつなが関心を寄せる前方の方では、司会が次の余興を発表していた。次は先日優が浩志に話していた『生徒から先生へ一言』。前の方のテーブルから順に壇上へ上がるよう司会から指示が出されて、生徒が移動を始めた。生徒たちが移動をする間にできた少しの空白時間に、せつなは辺りをキョロキョロと見回し浩志がいない事に改めて気がついた。
「あれ? 成瀬くんは?」
不思議そうに問うせつなに、優はしれっと答える。
「あ〜、なんかトイレだって」
「ふ〜ん。早く戻ってこないかしら」
せつなは、司会に促され徐々に伸び始めた生徒の列を見遣る。
「優ちゃんたちも、あの列に参加するのよね?」
どことなく緊張気味に問うせつなに、優は大きく頷く。
「もちろん!」
「あ、あのね……私も一緒に行っていいかな? たとえお姉ちゃんに気が付かれなくても、近くできちんとお祝いを言いたいの」
せつなは懇願するように胸の前で手を組み、いつか浩志にやったようにお願いポーズを取る。それは、男子の心だけではなく女子の心をも掴む威力があった。せつながとても可愛らしく優の目には映る。
「当たり前だよ! もとから一緒に行くつもり!」



