それで次の企画を理解した新郎新婦は、目配せをし合い、ハサミを持つ新婦蒼井の手に、新郎正人が、そっと手を添えた。

 それを確認した司会者は、声高にカウントダウンをとり、そのカウントに合わせて舞台上の2人は、ラッピングにハサミを入れた。

 ラッピングがハラリと捲れると、中からは藤の籠いっぱいに詰められたお菓子が現れた。蒼井はその籠を手に、正人と舞台の端ギリギリまで、進み出る。どうやら、どこかの地方で結婚祝いに行われている菓子撒きを行う様だ。

 籠に手をかけた2人は、司会の「そ〜れっ」という掛け声に合わせて、個包装された小さめのお菓子を舞台下の生徒たちに投げる。生徒たちは、そのお菓子に向かって年甲斐もなく手を伸ばし、大はしゃぎだ。

 浩志たちもその波に揉まれながら、その場の雰囲気を楽しむ。

「ケーキじゃなくても、結構大盤振る舞いだな」
「これ、小石川先生の寄付よ」
「へ〜、なかなかやるな。こいちゃん」
「俊ちゃん、お姉ちゃんたちのために、かなり協力してくれたのね」

 優の種明かしに、浩志とせつなは感心仕切りだった。

 次第に生徒たちは自ら菓子を呼び込み、壇上の2人はそれに応える形で近くへ遠くへと菓子を投げ、籠の中身がすっかりなくなると、それで、「初めての共同作業」企画は終わりとなった。

 それぞれの生徒が戦利品を手に、各自のテーブルへと引き返す中、優は、浩志にだけ聞こえる様に小さな声で囁いた。

「成瀬、次よ」

 その声に、無言で頷いた浩志は、自分たちのテーブルへ戻ると、手にした菓子を机に山積みにしてから、なるべく自然を装ってボソリと呟いた。

「俺、ちょっと、トイレ」

 そう言うと、2人とは視線を合わせずに、そそくさと出口へと向かって行った。

 せつなは、余程パーティーを楽しんでいるのか、浩志の言葉に「うん」と答えたものの、目は前方を向いている。そんなせつなの様子を見つつ、優は、ジェスチャーで浩志を追い立てた。

 せつなが関心を寄せる前方の方では、司会が次の余興を発表していた。次は、先日優が浩志に話していた『生徒から先生へ一言』のコーナーの様だ。

 前の方のテーブルから壇上へ上がる様にと、司会から指示が出されて、生徒が移動を始めた。

 生徒たちが移動をする間に出来た、少しの空白時間に、せつなは辺りをキョロキョロと見回し、浩志がいない事に、改めて気がついた。

「あれ? 成瀬くんは?」