せつなの答えに優も嬉しそうに笑顔を弾けさせる。その横で浩志は口を盛大に動かしながら、優が持参した唐揚げに手を伸ばす。

「せつな、食べないのか? 河合が持ってきたこの唐揚げ、めちゃくちゃ美味いぞ」
「もう。成瀬ってば、食べてばかりいないで、少しはパーティーを楽しみなさいよ。でも、ありがと。頑張って作った甲斐があったわ」

 優は呆れながらも嬉しそうに頬を染めた。そんな優を見て、せつながキャッキャと声を弾ませる。

「優ちゃんってば、お料理上手なの? いいお嫁さんになるんじゃない? ね、成瀬くん!」
「ん? ああ、そうだな」

 ニヤニヤとしながら浩志と優を見比べるせつなの視線に、唐揚げに夢中の浩志は気が付かなかったが、優は顔を赤らめながら反発した。

「も〜、辞めてよ。揶揄わないで」
「成瀬くん! ぼんやりしてると誰かに取られちゃうよ〜」

 食べることに夢中で女子の会話など全く気にしていなかった浩志は、せつなの言葉に目をパチクリとさせる。それから、何かに気がついたのか真剣に悩み始めた。

「ど、どうしたの? 成瀬?」

 浩志のその様子から淡い期待を抱きさらに顔を赤らめた優と、次の展開が待ちきれないせつなが見守る中、彼は意を決した様に口を開いた。

「正直、取られるのは嫌だ」
「な、成瀬?」
「お! 成瀬くん。ついに、ここで言っちゃう?」
「取られるのは嫌だけど、やっぱり、みんなで共有すべきだよな」
「……は?」
「えっと……、成瀬くん? なんのこと?」

 思いも寄らなかった浩志の言葉に、二人は眉根を寄せる。そんな二人に向かって、浩志は苦渋の決断をしたのか苦しそうに言葉を絞り出した。

「だって、この唐揚げマジで美味いんだ。本当は一人で全部食いたいけど、やっぱり、それはダメだよな」

 残念そうに唐揚げを見る彼のことを、優とせつなはその数倍残念そうに見遣った。その後、気を取り直した優はせつなに声をかける。

「ホントだよ。せつなさん、成瀬に全部食べられちゃう前に食べて」

 しかし、せつなは残念そうに眉尻を下げた。

「う〜ん。食べたいんだけどね……」
「あ、アレルギーとか?」
「ううん、そうじゃなくて。せつなにごはんは必要ないんだ」
「えっ? でも……」

 せつなの言葉に、先程手渡したペットボトルへ視線を向ければ、フタは開いているが中身は減っていないことに気がついた。

「ココロノカケラには、食事は必要ないんだよ」
「そうか……そうだね。少し考えれば分かることなのに、私ったら……」