そんな様子を、浩志は壁にもたれ、無表情に見ていた。それとは対象的に、壇上を食い入る様に見つめるせつなの姿を、大役を終え、ひっそりと2人に合流した優は、満足そうに眺める。

 こうして、予定通り蒼井教諭を驚かせつつ始まったパーティーは、小石川からの趣旨説明が終わり、目配せで合図を受けた司会が、乾杯をする事を告げると、参加者はそれぞれ自身が持参した飲み物を手に取った。

 浩志たちもそれに倣い、机に用意していたペットボトルを手に取る。せつなの分は、優がしっかりと用意してきていた。

 壇上の2人も、小石川のポケットマネーで用意された飲み物を手に、乾杯の音頭を待っている。

 小石川は、それとなく館内を見回して頃合いを図ると、司会と目配せをし合う。そして、マイクを通して軽快な声を響かせた。

「え〜、それでは、僭越ではありますが、2人の友人であります僕が、乾杯の音頭を取らせて頂きます」

 そこで一度言葉を切ると、小石川は、マイクをオフにし、思い切り息を吸い込んだ。そして、手にした飲み物を掲げ、声高に叫ぶ。

「全員、飲み物は持ったかー?」

 その掛け声で一気にテンションを上げた生徒たちも、飲み物を高く上げ、口々に呼応する。男子の野太い声や、女子の華やかな声が体育館を埋め尽くす。その反応をしたり顔で受け止めた小石川は、再び、大きく息を吸い込んだ。

「それでは……カンパーイ!!」

 小石川の声に合わせて、各テーブルでは、飲み物が勢いよくぶつけられる。浩志たち3人も、壁際の片隅で、ひっそりと、ペットボトルを合わせ乾杯をすると、それぞれが、飲み物を口にした。

 本日の主役たちは、そんな小石川の煽り方に、苦笑混じりの笑顔を見せている。

 乾杯の後は、場をなごますために、しばし昼食と歓談という事だった。

 浩志たちも、持ってきたサンドウィッチやおにぎりを頬張りながら、館内をグルリと見渡す。

 誰も彼もにこやかで楽しげな様子だ。生徒に混じり、急遽参加した教師たちも数人いた。大人たちは、壇上で軽快に言葉を交わしている。今井正人もその輪に加わり、仕切りに罰が悪そうに、苦笑いしているあたり、もしかしたら、声をかけた教師は、彼の恩師なのかもしれない。

 そんな様子に、3人は満足げな笑みを漏らす。優は、昼食を頬張りながら、せつなに声をかけた。

「どう、せつなさん?」