浩志は自信満々に肯いたものの、その後がなかなか続かなかった。

「もう! 覚えてないじゃん」

 優は焦ったそうに顔を顰めると、カバンからスマホを取り出した。

「どんな花とか、知ってることある?」
「ん〜、確か、紫の小さい花が、ふわっと、いっぱいくっついてるやつ」
「は? 何それ? まぁ、いいわ。……えっと、……紫の花……スター………」

 優は手早く検索事項を手元に入力すると、すぐに腕を伸ばして画面を浩志の方へ見せる。

「もしかして、コレ?」

 浩志が優の手元の画面を覗き込むと、そこには、図書館の図鑑で見た花が映し出されていた。

「そうそう! コレ! スターチス!」
「ふ〜ん」

 優は浩志に向けて伸ばしていた手を引っ込めると、再び素早く入力した。それから画面をスクロールさせ、何かを確認してからスマホをカバンにしまった。

「ここから近くのお花屋さんでも取り扱ってるみたいよ。行きましょ」
「え?」

 突然の言葉に浩志が呆けている間に、優はカバンを手に席を立った。

「お、おい。ちょっと……」

 浩志の呼びかけに、優は頭頂部の白いリボンを揺らしながら振り返ると、笑顔いっぱいに言い放った。

「早く! お花の注文に行くわよ!」