「それさ、せつなが知ったら喜ぶと思う。今度、話してもいいか?」
「あ~、うん。それは、話しても大丈夫」
「それは? なんだ? 他に話したらまずい事でもあるのか?」
「……まずいっていうか、内緒にして当日驚かせたいというか……。今日、成瀬を呼んだのは、その相談なの」

 優は、いたずらを企んでいるような楽しそうな表情を見せる。

「なんだよ?」
「前にさ、せつなさんは蒼井ちゃんにあげたい花が本当はあるんだって、成瀬言ってたじゃない? でもお店では買えないから、造花を作ってるんだって」
「ん? ああ、そう言えばそうだったな」

 浩志は片眉を上げ少し前の記憶を辿ると、肯いた。

「その花、何か知っている?」
「ああ。せつなと蒼井が一緒に種まきした花だろ」
「それって、あそこの花壇の?」
「そう。でも、まだ咲かないしなぁ〜」
「だいぶ緑は広がったけどね」
「今日の式には間に合わなかったなぁ。四月一日にも間に合うかどうか」

 二人は同時にため息を吐いた。

「まぁ、もともと、咲くかどうかも分からないからなぁ。ずっと手入れされて無かったって言うし」
「そうなんだ。じゃあ、やっぱりお節介かもだけど、やっちゃおうかな」

 独りごちた優に、浩志は不思議そうに視線を投げる。その視線に気がついた優は、慌てて思いを口にした。

「あのね。せつなさんが蒼井ちゃんに渡したいお花、私たちからプレゼントしない?」

 浩志は驚きのあまり、思わず大きな声を出す。

「え? どうやってだよ?」

 浩志の問いかけに、優は不思議そうに小首を傾げた。

「どうやってって、お花屋さんで買うんだけど?」

 さも当たり前と言うようにさらりと答える優に、浩志は困惑の表情を見せた。

「いや。だって、せつなは花屋で買えないから、折り紙で花を作ってるんだろ?」
「それは、せつなさんが」

 優は周りにチラリと視線を向けてから、口に手を当てて声をひそめた。

「ココロノカケラだからでしょ? 学校から動けないから」
「あっ! そうか」

 優の説明になるほどと閃いたように、浩志は目を丸くしていた。

「たぶん、そうだと思うの。せつなさんには買えなくても、私たちなら買えるんじゃないかって。それで、お花屋さんに行こうと思ったんだけど、よく考えたら、私、せつなさんが欲しいと思ってるお花のこと、知らなかったのよ」
「なるほど。で、俺なら知ってるかもってことか」
「そう! 知ってる?」
「ああ、聞いたことある。ええっと、なんだったかなあ……スター……スター」