違和感の正体に気がついてしまうと、またしても心臓が忙しく動き始めた気がした。
手にしたアイスのカップを取り落とさないよう、カップの形が少しばかりくずれる程に手に力を込めて持ち、どこか、ぎこちない足取りで浩志は優の待つ席へと戻った。優は無邪気に「何にした~?」と浩志の手の中を覗き込み、すぐに、遠慮なく笑いだす。
「なによ。成瀬。カップ潰れてるじゃない。そんなに強く持たないと、落としそうだったの?」
ケラケラと笑う優と目を合わさないように、浩志は視線を微妙にずらして、どこか、居心地悪そうに鼻の頭に皺を寄せながら、無言でアイスクリームを掬った。
「あっ! それ! 実は、迷ったんだよね~。一口ちょうだい!」
浩志が一口食べたのを確認した優は、そう言うや、自分のスプーンで、浩志のアイスクリームを掬い取り、自身の口へと放り込む。一瞬の出来事に、思わず言葉をのんだ浩志だったが、ハッと我に返ると、彼女の行動に抗議の声をあげた。
「おいっ!」
「えっ? あっ! ごめん。もしかして、成瀬、シェアとかダメな人だった」
「……そうじゃ、ないけど……そういうことじゃなくて……」
「だったら、いいじゃない。許して。私のも一口食べていいから」
そう言いながら、優は、モゴモゴと口籠る浩志に向かって、自身のカップを寄せた。優はまるで、友人同士の食べ物のシェアは当然であるかのように振舞っているが、浩志は、女子とそんなことをしたことがなく、嫌でも意識してしまう。
そんな浩志の胸の内など、全く思いもよらないという風に、優は、ほらほらと無邪気に自身のアイスクリームを薦めてくる。仕方がないので、浩志は、なんてことはないという顔をしつつ、まだ、優が崩していない部分のアイスを自身のスプーンで少し掬い取り、すぐさま口の中へと納めた。
バクバクとうるさい鼓動に気を取られていたせいで、少ないアイスの存在は全く感じられずに、口の中であっという間に溶けてなくなった。
「どう? これも美味しいよね?」
浩志が口からスプーンを離した隙をついて、優が薄っすら頬を紅潮させつつ、興奮気味に声を弾ませる。浩志は、味などさっぱりわからなかったので、曖昧に頷いておいた。
「……あ、ああ。……甘い」
「だよね! だよね!」
アイスクリームを食べているのだから、甘いのは当たり前のはずなのに、浩志の答えに、優は、どこか満足そうで、やたらと相槌を繰り返していた。
手にしたアイスのカップを取り落とさないよう、カップの形が少しばかりくずれる程に手に力を込めて持ち、どこか、ぎこちない足取りで浩志は優の待つ席へと戻った。優は無邪気に「何にした~?」と浩志の手の中を覗き込み、すぐに、遠慮なく笑いだす。
「なによ。成瀬。カップ潰れてるじゃない。そんなに強く持たないと、落としそうだったの?」
ケラケラと笑う優と目を合わさないように、浩志は視線を微妙にずらして、どこか、居心地悪そうに鼻の頭に皺を寄せながら、無言でアイスクリームを掬った。
「あっ! それ! 実は、迷ったんだよね~。一口ちょうだい!」
浩志が一口食べたのを確認した優は、そう言うや、自分のスプーンで、浩志のアイスクリームを掬い取り、自身の口へと放り込む。一瞬の出来事に、思わず言葉をのんだ浩志だったが、ハッと我に返ると、彼女の行動に抗議の声をあげた。
「おいっ!」
「えっ? あっ! ごめん。もしかして、成瀬、シェアとかダメな人だった」
「……そうじゃ、ないけど……そういうことじゃなくて……」
「だったら、いいじゃない。許して。私のも一口食べていいから」
そう言いながら、優は、モゴモゴと口籠る浩志に向かって、自身のカップを寄せた。優はまるで、友人同士の食べ物のシェアは当然であるかのように振舞っているが、浩志は、女子とそんなことをしたことがなく、嫌でも意識してしまう。
そんな浩志の胸の内など、全く思いもよらないという風に、優は、ほらほらと無邪気に自身のアイスクリームを薦めてくる。仕方がないので、浩志は、なんてことはないという顔をしつつ、まだ、優が崩していない部分のアイスを自身のスプーンで少し掬い取り、すぐさま口の中へと納めた。
バクバクとうるさい鼓動に気を取られていたせいで、少ないアイスの存在は全く感じられずに、口の中であっという間に溶けてなくなった。
「どう? これも美味しいよね?」
浩志が口からスプーンを離した隙をついて、優が薄っすら頬を紅潮させつつ、興奮気味に声を弾ませる。浩志は、味などさっぱりわからなかったので、曖昧に頷いておいた。
「……あ、ああ。……甘い」
「だよね! だよね!」
アイスクリームを食べているのだから、甘いのは当たり前のはずなのに、浩志の答えに、優は、どこか満足そうで、やたらと相槌を繰り返していた。