「まずは、このお花をもっとたくさん作って! 会場をせつなさんのいっぱいの想いで包み込むみたいに、このお花で埋め尽くそう」
「優ちゃん……」
「あとは? 何がしたい? 素敵なパーティーになるように、私たちももちろん考えるけれど、せつなさんはそれ以上に、蒼井ちゃんにしてあげたいことをたくさん考えて。私たちはそれが実現できるように、サポートするから」

 自身で考えろとせつなを鼓舞しているくせに、己自身で話をテキパキと進める優に苦笑しつつ、浩志がせつなに声をかける。

「そうだぞ。せつな。この際だから、やりたいこと、蒼井に伝えたいことをいっぱい考えろ。で、考えたことは、無理でもなんでも遠慮しないでどんどん言え。できることは、何でもやってやる! できないことは……、まぁ、そのとき考えよう」

 浩志の言葉に大きく頷いたせつなは、それから、黙々と手を動かし始めた。その顔は真剣そのものだ。それを見た優は愛おしそうに口元を綻ばせてから、浩志の方へと向き直ると、いつもの口調で彼をこき使う。

「成瀬は今日のノルマ終わったんでしょ? 暇してるなら、小石川先生のところに行ってきてよ?」
「なんでだよ?」
「たぶん、学校でやるには、何かの手続きをしないといけないはずよ。どうやって動けばいいか、先生に確認してきて。それから、近日中に借りられる場所はどこになるのかも。場所によって、やれることも変わってくると思うから」
「お前がいけばいいじゃねぇか」

 優の指示に浩志が不服そうに言葉を返すと、彼女は呆れたようにそれを撥ね返す。

「もう、バカね。私はこの花を仕上げつつ、部員への交渉と了承を取り付けるので忙しいのよ。成瀬にはできないでしょ?」
「へいへい。わかったよ」

 浩志は肩をすくめると、席を立ち教室を後にした。