「どうして……?」
「なんとなく、そうなのかなぁって思ったの。みんなの机にこの花を置いてたのって、せつなさんなんだよね?」

 優は、机の上にある出来上がったばかりの花を1つ手に取ると、それを軽く振りながらせつなの顔を覗き込む。せつなは、優の問いに素直に肯いた。

「この花の話を聞いた時は、正直怖かったの」
「……やっぱり……そうだよね」

 せつなは小さく言葉を漏らすと、寂しそうに俯いた。

「……ごめんね。事情を知らなかったから。……でも、せつなさんと仲良くなって、改めて思い返してみたの。どうして、机の上にお花を残したんだろうって」
「そんな事、考えなくても分かるじゃないか」

 優が真剣な口調で話す中、浩志が呆れたように口を挟んだ。

「うっかり、置き忘れだろ?」

 あっけらかんと言い放つ浩志を、優とせつなは無言で睨みつけた。二人の鋭い視線にものの見事に萎縮した浩志は、思わず眉をピクリと震わせ口を閉じた。

「あのさ。このお花を、自分の代わりに蒼井ちゃんに渡して欲しいって思ってたんじゃない? 出来れば沢山の人に渡して、みんなにお祝いして欲しいって思ってたんじゃない?」

 せつなは口をぎゅっと結び、優の目だけを見据えている。しかし暫くすると、固く結ばれていた口元はフルフルと震え出し、やがて、せつなの震える声が溢れ出た。

「……うん。そうなの。優ちゃんは、なんでも分かっちゃうんだね」
「分かるわけじゃないよ。私がせつなさんの立場だったらって考えたの。それで、誰でもいいから私の代わりに私の気持ちを伝えてほしいって、そう思っただけ」
「……でも伝わらなくて、結局、怖がられてゴミ箱に捨てられちゃった」

 瞳に水の膜を張りながらエヘッと笑うせつなの手を取り、優は頭を下げる。

「ごめんね。早く気付いてあげられなくて」
「ううん。もう平気。だって、成瀬くんと優ちゃんが気づいてくれたから」

 優は少女の頭をひと撫ですると、優しく微笑んだ。しかし、その表情とは裏腹に凛とした声をせつなに向ける。

「私たちはせつなさんの存在に気がついて、そして、友達になった。友達の願いだもの。私たちにできることなら、何だって全力で協力する。だけどね、せつなさん。これは、あなたの願いなの。だったら、あなたは私たち以上に、全力で事に当たらなくちゃ」
「え? それって、どういう……?」

 突然の優の厳しい物言いに、不安そうに顔を曇らせるせつな。そんな少女に優は、ニカリと笑いかける。