どうやら部内でも、蒼井教諭の結婚を祝おうという話が持ち上がっているらしく、彼女は同期メンバーとその打ち合わせをしてきたようだった。現状では、部員が少額ずつお金を出し合ってお祝いの品を送るのが良いのではないかという案が出ているのだが、顧問とはいえ、めったに部活に顔を出さない教諭とは繋がりは薄いのだから金銭はかけたくないという声も少なからずあり、結局、話はまとまらず本日は解散してきたのだという。

「でもよ~。だったらそいつら、結婚祝いパーティーなんて準備するのも嫌がるんじゃないのか?」

 優の話を聞いた浩志が訝し気に疑問を口にするが、優は笑う。

「大丈夫よ。その子たちは、お金を出したくないだけだもの。別に、蒼井ちゃんを祝福したくないわけじゃないの」
「そうなのか?」
「そうよ。それに、結婚式をプロデュースするなんて滅多にできることじゃないもの。ほとんどの女子は積極的に動くわよ。きっと」
「そんなもんか……?」

 握りこぶしを作り力説する優に首を傾げつつ、浩志は、せつなの意見を求めるように少女へ視線を投げた。しかし、せつなも浩志同様に優を見つめ、首を傾げることしかできなかった。

「大丈夫。そのあたりは私に任せて。まあでも、うちの部だけじゃ人が限られちゃうから、有志を募りましょ。成瀬、他の子にも声かけてちょうだい」
「え? バスケ部のイベントなのにいいのか?」
「だって、うちの部だけじゃ女子部なんだから、成瀬が参加してたら不自然になるでしょ。サッカー部辺りに声かけてよ。あぁ、小石川先生にお願いしましょ。男子がいれば、力仕事をお願いできるしね」

 一人で話をポンポンと進める優をしばらく、ポカンと見つめていたせつなだったが、突然ハッとしたように優の話を遮った。

「優ちゃん、それはちょっと無理なんじゃない?」
「どうして?」
「だって、元々はせつながお姉ちゃんのことをお祝いしたいから、この花を作っているわけで。みんなには、関係ないことだもの。せつなのわがままに、みんなを巻き込むなんて……」

 そう言って寂しそうに言葉尻を弱めるせつなに、優は、姉のようにやさしく語り掛ける。

「せつなさん、大丈夫よ心配ない。みんな、面倒事は嫌いだけどイベント事は好きだもの。お祝いパーティーをみんなが楽しめるイベントにしましょ! 本当はせつなさんだって、みんなにお姉さんを祝福して欲しいんでしょ?」

 優の言葉に、せつなはハッとしたように目を見開く。