優とせつなは、互いの手をきつく握り合って、頷いた。

「でもさ~。成功させるったって、実際問題、どうするんだよ?」

 浩志がその場に水を差すように、問題点を指摘すると、優は、せつなの手を離し、人差し指を、ビシリと彼に突きつける。

「だから、さっき言ったでしょ。主催は、うちの部でやるわ。実は、今日遅くなったのも、それが理由なのよ」

 どうやら、部内でも、蒼井教諭の結婚を祝おうという話が持ち上がっているらしく、彼女は、同期メンバーとその打ち合わせをしてきたようだった。現状では、部員が少額ずつお金を出し合って、お祝いの品を送るのが良いのではないかという案が出ているのだが、顧問とは言え、めったに部活に顔を出さない教諭とは、繋がりは薄いのだから、金銭はかけたくないという声も少なからずあり、結局、話はまとまらず、本日は解散してきたのだという。

「でもよ~。だったら、そいつら、結婚祝いパーティーなんてのも嫌がるんじゃないのか?」

 優の話を聞いた浩志が訝し気に疑問を口にするが、優は笑う。

「大丈夫よ。だって、あの子たちは、お金を出したくないだけだもの。別に、蒼井ちゃんを祝福したくないわけじゃないわ」
「そうなのか?」
「そうよ。それに、結婚式をプロデュースするなんて、めったにできることじゃないもの。ほとんどの女子は、積極的に動くわよ。きっと」
「そんなもんか……?」

 握りこぶしを作り力説する優に首を傾げつつ、浩志は、せつなの意見を求めるように少女へ視線を投げた。しかし、せつなも、浩志同様に、優を見つめ、首を傾げることしかできなかった。

「大丈夫。そのあたりは任せて。まあ、でも、うちの部だけじゃ、人が限られちゃうから、有志を募りましょ。成瀬、他の子にも声かけてちょうだい」
「え? いいのか?」
「だって、うちの部だけじゃ、女子部なんだから、成瀬が参加してたら不自然でしょ。サッカー部辺りに声かけてよ。あぁ、小石川先生にお願いしましょ。男子がいれば、力仕事をお願いできるしね」

 一人で話をポンポンと進める優をしばらく、ポカンと見つめていたせつなだったが、突然ハッとしたように、優の話を遮った。

「優ちゃん、それは、ちょっと無理なんじゃない?」
「どうして?」
「だって、元々は、せつながお姉ちゃんのことをお祝いしたいから、この花を作っているわけで……みんなには、関係ないことだもの……せつなのわがままに、みんなを巻き込むなんて……」