優は呆れたように大袈裟にため息を吐きつつ、作業をしながらチラリと浩志へ視線を向けた。

「いや。個人的な利用は無理だけど、今回の場合、蒼井の結婚祝いって利用目的がハッキリしているから、例えば部活動の一環としてなら施設利用の申請も通るんじゃないかって、こいちゃんが……」
「えっ? それって!」

 優は思わず作業の手を止めて、思いっきり浩志の片腕を掴む。

「な、なんだよ?」

 優の咄嗟の行動に浩志は思わず半身を引き、思いがけず近くなった優の顔から距離を取る。そんな彼の行動などお構いなしに、優の顔は満面の笑みで輝いていた。

「なによも〜。つまり、学校で出来るってことじゃない!」
「いや、だからさ。部活の一環ならって……」

 優の勢いに押され気味の浩志は、念を押すように釘を刺すが、彼女は「うんうん」と満足げに頷くばかり。その反応に不安を覚えた浩志とせつなは、互いに目配せをした。そして、せつなが心配そうに声をかける。

「あの、優ちゃん? ちゃんと分かってる?」
「大丈夫よ。部活動として、施設利用の申請をすればいいんでしょ?」
「俊ちゃんの口ぶりではそうだったけど……でも……部活じゃないのに、そんな事……」
「部活動の一環だよ! 大丈夫!」

 優は自信ありげに胸を張る。そんな彼女を訝しげに見つつ、浩志は呆れたように声を出す。

「なんだよ? 今から部活を作る気か? 無理だぞ。そんなの間に合わない」

 訝しむ浩志と心配そうに見つめるせつなに、優はキョトンとした顔を見せた。

「そんな事言わないわよ? え? 何? 二人とも分かってないの? 解決方法」

 優の言葉に浩志とせつなは顔を見合わせ、揃って首を傾げる。そんな二人に驚きを隠せない様子で、優はしばらくポカンと口を開けていた。だが、数瞬して気を取り直すと椅子に座り直す。そして、さも当たり前の事を言うように、サラリと解決方法を口にした。

「うちの部がやればいいのよ。蒼井ちゃんの結婚お祝いパーティーを、バスケ部がするの!」

 優の答えを聞いた瞬間、今度は二人がポカンと口を開いた。優だけが可笑そうにクスクスと笑いながら、二人の顔を見比べる。

「何よ二人とも。こんな簡単な事にも気が付かずに難しい顔をしてたの?」

 優の何気ない言葉に浩志とせつなは再び顔を見合わせると、せつなは少し俯いた。そんなせつなの代わりに、浩志が少し言いにくそうに口を開く。

「まぁ、部活利用をどうやって切り抜けるかももちろん悩んではいたんだけど……」