「さて、じゃあ、時間もない事だし、テキパキと行動するわよ! 確認だけど、せつなさんの希望は、お姉さん、蒼井先生の結婚式への参加でいいのかしら?」
「うん」

 優の問いに、せつなは、涙で濡れた頬を手のひらでグイッと拭うと、真っ直ぐな眼差しを優に向け、しっかりと肯いた。せつなのその反応に、優も頷き笑顔を見せたあと、彼女は、不満げに、浩志に声をかける。

「ちょっと、成瀬。ちゃんと聞いてる」

 2人から視線を逸らし、よそ見をしていた浩志は、不意に名前を呼ばれ、慌てつつも、一歩、2人のそばへ近づいて、聞いていたとばかりに、反応を示す。

「お、おう」
「これからのことについて今から、話し合うんだから、よそ見してないでちゃんと聞いて」
「わかってるって」

 3人は、花壇の前で輪になると、それぞれがお互いの顔を見回し、視線で合図をしあった。それから、進行を務めるような口調で、優が、話を進め出した。

「まず、蒼井ちゃんの結婚式の日取りなんだけど……」
「それ、前に、いつとか言ってなかったっけ?」

 浩志が、記憶を辿ろうと、首を傾げていると、優は、そんな浩志に向かって、間髪入れずに、答える。

「3月25日。次の日曜日よ」
「おい! 今日を入れて、あと5日しかないじゃん」
「そうよ。だから時間がないって言ってるでしょ。それでね、さっきも散々話してたけど、せつなさんの移動のこと。これは、多分だけど、意識が、学校と言う場所に紐づけされている以上、移動不可だと思った方がいいと思う」
「なんだよ。それじゃあ、結局、せつなの希望を叶えられないじゃん」

 優の考えを聞いた浩志は、口を尖らせ不満を口にする。2人のやり取りを聞いていたせつなも、目に見えて肩を落とした。しかし、優だけは、変わらず、真っ直ぐに2人を見る。

「そんなことないわ。ここでやればいいのよ」
「ここ? ここって、まさか……」

 優の提案に、浩志は眉を顰めてから、ハッとしたように彼女を見た。彼女の表情からは、それが冗談ではない事が窺えた。

「そう! 学校よ」
「そ、そんなこと出来るのか?」
「出来るかどうかは分からないわよ。ダメだった時は、次の手を考えなきゃ。だから、急いで行動に移らなきゃいけないの」
「で、でも……何を?」

 困惑したまま、浩志は優に先を促す。せつなは、望みを全て託すかのように、両掌を胸の前で組み、手の甲が白くなる程に握り合わせる。

「まずは、大人の協力者を得ましょう!」