「そうなのか?」
浩志は驚いたように目を見開く。そんな彼に対して、彼女は残念そうに一度首を振る。
「たとえばの話よ。でも例えば、おうちに帰ってお母さんの作ったグラタンが食べたかったと思い続けているせつなさんがいたとしたら、せつなさんのココロノカケラはどこにどういう状態で現れると思う?」
「そりゃあ家だろ。しかも、キッチンだな。きっと料理している母ちゃんにべったりだ」
浩志は冗談めかして答える。その答えにせつなは思わず優の腕の中で顔をあげて、プウっとかわいらしくむくれて見せた。そんなせつなに優は安心したように笑顔を向けてから話を続ける。
「きっとそうね。そのときはたぶん、学校に行きたいだとか花の咲くところが見たいなんて思いはどこにもないんじゃないかな。ただひたすらにお母さんのグラタンのことを思ってると思うの。強く思うってそういうことじゃない?」
優の言葉に浩志は感心したように大きく頷いた。
「確かにそうだな。ここにいるせつなは学校と花と制服、これを強く思っているせつなだもんな。せつなの口からグラタンなんて単語聞いたことないし」
「まぁ、それはあくまでも例えだけどね」
浩志の答えに優は苦笑いを浮かべる。それから気を取り直したように真顔になると話を続けた。
「だからね、せつなさんがお母さんの事をこれまで思っていなかったのは忘れていたとかそういう事じゃなくて、せつなさんを形作っているもの、学校や花や制服やそれに関連する思いがより強く表面に出ていただけ」
優は真顔のまませつなを見据えキッパリと言い切る。
「でも、お母さんの事がせつなさんの中に全くないかというとそれは違って、お花を見たいと思うせつなさんの中にも、やっぱり、お母さんという要素はちゃんとあると思う。さっきは、成瀬の言葉をきっかけにお母さんの事が意識の表面上へ引っ張り上げられたんじゃないのかな」
少女は顔を上げて涙の止まった瞳で優の真顔を受け止めていた。
「そう、なのかな」
せつなは小首を傾げつつ、自分の中の思いと向き合おうとするかのように、中空を見つめぼんやりとする。そんなせつなと優の顔を交互に見比べつつ、浩志は感心したように口を開いた。
「お前すごいな。なんでそんなこと知ってるんだよ?」
「知ってる訳じゃないよ。ただそんな気がするだけ」
優は困ったように肩を竦め、また真顔になる。
「それでね。私は、せつなさんの力になりたいと思ってるんだけど」
「え?」
浩志は驚いたように目を見開く。そんな彼に対して、彼女は残念そうに一度首を振る。
「たとえばの話よ。でも例えば、おうちに帰ってお母さんの作ったグラタンが食べたかったと思い続けているせつなさんがいたとしたら、せつなさんのココロノカケラはどこにどういう状態で現れると思う?」
「そりゃあ家だろ。しかも、キッチンだな。きっと料理している母ちゃんにべったりだ」
浩志は冗談めかして答える。その答えにせつなは思わず優の腕の中で顔をあげて、プウっとかわいらしくむくれて見せた。そんなせつなに優は安心したように笑顔を向けてから話を続ける。
「きっとそうね。そのときはたぶん、学校に行きたいだとか花の咲くところが見たいなんて思いはどこにもないんじゃないかな。ただひたすらにお母さんのグラタンのことを思ってると思うの。強く思うってそういうことじゃない?」
優の言葉に浩志は感心したように大きく頷いた。
「確かにそうだな。ここにいるせつなは学校と花と制服、これを強く思っているせつなだもんな。せつなの口からグラタンなんて単語聞いたことないし」
「まぁ、それはあくまでも例えだけどね」
浩志の答えに優は苦笑いを浮かべる。それから気を取り直したように真顔になると話を続けた。
「だからね、せつなさんがお母さんの事をこれまで思っていなかったのは忘れていたとかそういう事じゃなくて、せつなさんを形作っているもの、学校や花や制服やそれに関連する思いがより強く表面に出ていただけ」
優は真顔のまませつなを見据えキッパリと言い切る。
「でも、お母さんの事がせつなさんの中に全くないかというとそれは違って、お花を見たいと思うせつなさんの中にも、やっぱり、お母さんという要素はちゃんとあると思う。さっきは、成瀬の言葉をきっかけにお母さんの事が意識の表面上へ引っ張り上げられたんじゃないのかな」
少女は顔を上げて涙の止まった瞳で優の真顔を受け止めていた。
「そう、なのかな」
せつなは小首を傾げつつ、自分の中の思いと向き合おうとするかのように、中空を見つめぼんやりとする。そんなせつなと優の顔を交互に見比べつつ、浩志は感心したように口を開いた。
「お前すごいな。なんでそんなこと知ってるんだよ?」
「知ってる訳じゃないよ。ただそんな気がするだけ」
優は困ったように肩を竦め、また真顔になる。
「それでね。私は、せつなさんの力になりたいと思ってるんだけど」
「え?」



