「姉ちゃんを、悲しませることになる?」

 辛そうに言葉を切ったせつなの後を、心配そうに浩志は繋いだ。少女は、口を噤んだまま、コクリと頷く。

「ん〜、じゃあ、やっぱり、まずは、こいちゃんか……」

 浩志が腕を組み、思案顔をしていると、笑いを含んだ声が少し離れたところから聞こえてきた。

「な〜に、似合わない顔してんのよ?」

 声のした方へ視線を向けると、優が可笑そうに笑いながらやって来る。そして、浩志の姿を、上から下までじっくりと観察する。朝とは違って、きちんとした身なりになっていることに、ニヤリと含み笑いを見せた。

「朝、起こしに行って正解だったわね!」
「……早過ぎだっつーの」

 満足そうな彼女に、浩志は顔を顰めて見せたが、彼女は、そんな事はお構いなしに、せつなへと声をかける。

「あのね。私、今日は、せつなさんに確認したい事があるの」
「何? 優ちゃん」

 せつなは、優に向かって軽く小首を傾げて見せた。そんな少女の目をしっかりと見つめて、優は、言葉を慎重に選びながら、確認するように口を開いた。

「もしかしてなんだけど……、せつなさん、蒼井先生の結婚式に出席したいな、なんて思ってたりする?」

 優の言葉に、浩志とせつなは、驚きのあまり、思わず顔を見合わせた。それから、浩志は感心したような声を漏らす。

「すごいな、お前。よく分かったな。今、ちょうど、せつなと、その事を話してたんだよ」

 浩志の言葉に、せつなも、コクコクと首を縦に振る。

「やっぱりね! 昨日、いろいろ考えたのよ。せつなさんのこと。折り紙のお花のことも聞いてたからね。その事は、案外簡単に考えついたの。で、ここからが本題なんだけど……」

 優は、言葉を切り、一息つくと、少し顔色を曇らせる。

「せつなさんは、ここから離れる事は出来るのかな? 例えば、お家へ戻るとか……」

 優の言葉に、せつなは、ハッとしたように目を見開いたあと、空気が抜けるかのように、シュンとなってしまった。

「……やっぱり……無理なのね」

 せつなの態度で全てを悟った優も、少しばかり項垂れる。女の子たちの間で、1人、状況が分からない浩志は、焦ったように声をかける。

「な、なぁ? どう言う事だよ?」

 すっかり項垂れて、しょぼくれているせつなを気遣いつつ、優が説明をする。