優の問いに、浩志は花壇に視線を向けたまま短く答える。
小石川の反応を見てから、彼の心の中にも同じ疑問がずっと渦巻いていた。逸る気持ちを抑えつつ担任の話を聞き流し、解散になるのを今か今かと待っていた。しかしいざその時が来ると何故だか尻込みをしてしまい、小石川の元へ行くのを躊躇ってしまっている。
「行こう! 成瀬。小石川先生、待ってるよ」
少し力を込めた優の言葉は、まるで浩志の背中を押そうとしているようだ。彼女には、彼の緊張とも躊躇いとも言えないモヤモヤとした気持ちが見えているのだろう。浩志は、もう一度花壇を見つめる。幾分か大きめの真新しい制服を着た少女は、やはり今日も花壇には姿を現さない。彼はなにかを覚悟するかのように小さく息を吐き出す。そして小さく頷いた。
「……行くか」
机の上に無造作に置かれた鞄を手に取り、彼は教室の出口へと歩き出した。いつもならその後ろ姿を騒がしく追いかける優も、今日は言葉少なについて行く。
蒼井せつなという少女について、小石川はどんなことを口にするのだろうか。
今から語られるであろう事実を前に、二人の周りには重苦しい緊張が漂っていた。
小石川の反応を見てから、彼の心の中にも同じ疑問がずっと渦巻いていた。逸る気持ちを抑えつつ担任の話を聞き流し、解散になるのを今か今かと待っていた。しかしいざその時が来ると何故だか尻込みをしてしまい、小石川の元へ行くのを躊躇ってしまっている。
「行こう! 成瀬。小石川先生、待ってるよ」
少し力を込めた優の言葉は、まるで浩志の背中を押そうとしているようだ。彼女には、彼の緊張とも躊躇いとも言えないモヤモヤとした気持ちが見えているのだろう。浩志は、もう一度花壇を見つめる。幾分か大きめの真新しい制服を着た少女は、やはり今日も花壇には姿を現さない。彼はなにかを覚悟するかのように小さく息を吐き出す。そして小さく頷いた。
「……行くか」
机の上に無造作に置かれた鞄を手に取り、彼は教室の出口へと歩き出した。いつもならその後ろ姿を騒がしく追いかける優も、今日は言葉少なについて行く。
蒼井せつなという少女について、小石川はどんなことを口にするのだろうか。
今から語られるであろう事実を前に、二人の周りには重苦しい緊張が漂っていた。