「怖かったよなぁ〜。でも、大丈夫だぞ〜。アレは、呪いの花なんかじゃないから。俺が100パー保証する!」

 まるで小さな子供にでも言い聞かせるように、揶揄いを含んだ彼の口調と、意味の分からない強気な言葉に、つい、優は語調を強めてしまう。

「ハァ? 成瀬なんかに保証されても、全然意味ないんですけど〜?」

 そんな彼女の言い方に、浩志は、自分から揶揄っておきながら、彼女の可愛げない態度に、幾分腹立たしさを滲ませて反論する。

「なんで俺の保証じゃ意味ないんだよ! アレは、俺が作ってるんだぞ!! 作ってる本人が、呪いじゃないって言ってんだから、十分だろ!!」
「ちょっと? どう言うこと? 成瀬があの花を作ってるって?」
「えっ?……あ〜? い、いや。作ってるって言うか……、作るのを手伝っているって言うか……」

 浩志の勢い余った言葉をしっかりと耳にした優は、思わず、眉を顰める。優の素早い追及に、浩志は告げるつもりのなかった事を口にしてしまった事に今更のように気が付き、言葉を濁したが、時すでに遅し。彼女が追及の手を緩めることはない。

「どう言うこと? だって、成瀬、私があの花のこと教えるまで、何も知らなかったよね? あの頃から、よく遅くまで学校に残るようになったんじゃない? もしかして、何か関係があるの? ねぇ?」
「あ〜……」

 浩志は、優の勢いに押され、なんと説明したものかと、しばらく口篭っていた。

 しかし、もともと、今日の寄り道にはせつなも誘うつもりをしていたのだ。そうすれば、きっと、浩志とせつながどのような仲なのかと、優に問われることになっていただろうし、話の流れで、折り紙の花の事についても話していただろう。

 そう思い直し、浩志は優に向き直った。

「さっきも言ったけど、あの花は呪いの花とか、そんなんじゃないんだ。俺が作ってるって言ったけど、本当は、俺はほんの少し手伝ってるだけで、実際に作ってる奴は別にいる」
「……な、なんで成瀬がそんなことしてるの?」
「俺さ、少し前に、あの花を作ってる奴と知り合いになったんだ。そいつは、姉ちゃんが結婚する時に、花を贈りたいんだって」
「花?」
「うん。でも、花屋で買うのはダメらしい。それで、自分で作った花束を送ろうと、毎日、折り紙の花を折ってるんだ」
「それって……」
「そう。お前に、呪いの花って言われてるやつ」