「花を送れないから、花を作るってことは、まぁ、良いとして、一体どれくらい作るんだ?」
「たくさん」
「たくさんって……具体的に何本とかって決めてないのか?」

 彼の質問に、少女は、手作業を止めずに、フルフルと頭を振る。

「姉ちゃんにあげるのって、今作ってるやつだろ? 結構面倒臭そうだけど、間に合うのか?」

 少女は、再び頭を振る。

 浩志は、ため息を1つ吐くと、手近にあった棒状の物をもう一度手に取り、じっくりと眺めると、やがて、折り紙の束から緑色の折り紙を取り出して、器用にクルクルと丸め始めた。

 彼の行動に驚いたせつなは、手を止め、彼の手元を注視する。浩志の手には、綺麗に細く丸められた物が出来上がっていた。

「何してるの?」

 せつなは思わず声を漏らす。浩志は、出来上がった物を、脇へ避けると、新しい緑色の折り紙を、紙の束から取り出しながら、さも当然だと言いたげに、簡単に答えた。

「何って、手伝ってんの。これで作り方合ってるだろ?」
「合ってる……けど、何で?」
「何でって、どのくらい作るのか知らないけど、1人じゃ大変そうだし。でも、そっちは難しそうだから、こっちだけでもと思って」

 手の中に新しくできた緑色の棒で、浩志はせつなの手元を指す。せつなの手元には、花弁となる小さな折り紙が、細かく折られていた。

「手伝って……くれるの?」
「おう! まぁ、俺はこれくらいしか作れないけどな」

 浩志は、出来たばかりの棒を指先でクルリと回しながら、ニカっと笑みを溢す。

「……ありが……と」

 俯きがちに礼を述べた少女の肩は、少しだけ震えていた。しかし、目先のことにのめり込みやすい、単純な浩志は、その事に気がつくことはなく、その後も、せっせと緑色の棒を量産する事に没頭していた。