「ベルベッチカ、こっちだ!」
「アレク、お願い、手を離さないでっ」
雪原をひたすら走るふたつの影。両者はヒトの形をしているが、ヒトではない。「新月のモノ」と呼ばれる存在だ。この社会主義の超大国では、吸血鬼と呼ばれていた。
数時間前、住んでいた村が満月のモノ、おおかみの襲撃を受け壊滅した。おおかみ達を率いているモノを、ふたりは「オリジン」と呼んでいた。
……ベルベッチカも、新月のオリジンだ。今までただのおおかみなら引けを取ることもなかった。しかしここ数年、オリジンがおおかみを統率するようになった。格段に、手強くなった。それまで勝てていたおおかみに、苦戦するようになった。倒しても倒しても湧くように現れるおおかみに、押された。
そして……今回現れた満月のオリジン。
凄まじい強さだ。奴には、絶対に勝てない。
顔がわかる位まで接近もした。だが、どうやってもその姿を認識できないのだ。男か女かもわからない、顔もわからない。ヒトにも新月にも敵対し、数多の新月を葬ったその存在は、脅威以外の何者でもなかった。
そしていつの間にか包囲網は築かれていた。今まで隣人だった住人たちは、おおかみにすり替えられた。仲が良かった友達、隣人、知人はみな、二人に襲いかかった。
特に、六百九十七年生きてきたベルベッチカという名前の新月のオリジンに、満月のオリジンは固執した。
「アレク、お願い、手を離さないでっ」
雪原をひたすら走るふたつの影。両者はヒトの形をしているが、ヒトではない。「新月のモノ」と呼ばれる存在だ。この社会主義の超大国では、吸血鬼と呼ばれていた。
数時間前、住んでいた村が満月のモノ、おおかみの襲撃を受け壊滅した。おおかみ達を率いているモノを、ふたりは「オリジン」と呼んでいた。
……ベルベッチカも、新月のオリジンだ。今までただのおおかみなら引けを取ることもなかった。しかしここ数年、オリジンがおおかみを統率するようになった。格段に、手強くなった。それまで勝てていたおおかみに、苦戦するようになった。倒しても倒しても湧くように現れるおおかみに、押された。
そして……今回現れた満月のオリジン。
凄まじい強さだ。奴には、絶対に勝てない。
顔がわかる位まで接近もした。だが、どうやってもその姿を認識できないのだ。男か女かもわからない、顔もわからない。ヒトにも新月にも敵対し、数多の新月を葬ったその存在は、脅威以外の何者でもなかった。
そしていつの間にか包囲網は築かれていた。今まで隣人だった住人たちは、おおかみにすり替えられた。仲が良かった友達、隣人、知人はみな、二人に襲いかかった。
特に、六百九十七年生きてきたベルベッチカという名前の新月のオリジンに、満月のオリジンは固執した。

