「新月のモノ」は、「満月のモノ」とは対極にあるモノたちだ。かむと仲間を増やせる、という点では同じだがね。空を自在に飛び、獲物を見つけるとその長い牙で血を吸う。吸われた者は、新たな新月のモノになる。
 こちらは吸血鬼として有名だね。実際には、少し生態が違う。 満月と同じで新月にも「始祖」が存在する。太陽の光に当たると蒸発してしまうコピーと違い、「始祖」は太陽の元、自在に活動が出来る。新月の晩にその能力は開花し、一斉に血を吸いに夜空を飛ぶという。

「満月と新月……どちらもヒトをおそうの?」

 沙羅、そうだね、襲う。ただ、この村では、事情が異なる。おおかみ達の能力を制するのに新月のモノの肉を使うというのは、他の国や地域では全く知られていない。どうやら満月の「始祖」が何か詳しいことを知っているものと思われる。だから、この村では、十二年に一度の祭りのため、生贄が必要になる。新月のモノを、生贄にするんだ。今回は、誰かが新月の「始祖」ベルベッチカ・リリヰを何処かから連れてきた。