それから、七月六日までの毎日、逸瑠辺さんと帰った。神社をすぎて、山道を上って、抱っこで宙を飛んで。
機動戦士のモビルスーツのプラモを持って行った。薄暗いかんおけだけの部屋の中。ランドセルからそれを出すと、彼女は光る瞳をさらに輝かせた。赤い服のぬいぐるみといっしょに遊んだ。モビルスーツとぬいぐるみはダンスを踊った。ぬいぐるみがモビルスーツの悲劇のヒロインになることもあった。
楽しかった。
家に帰っても、お風呂の時も、おふとんに入った時も。翔と学校に通う時も、あゆみ先生の授業を聞いている時も。ずっとずっと、大好きな女の子のことを想った。お父さんもお母さんもいない、あの子の寂しさに思いをはせた。夜、眠らずに一人でかんおけに座る、彼女のことが脳裏にうかんだ。モビルスーツとぬいぐるみで遊ぶ、嬉しそうな目が頭からはなれない。
そうして、長い長い日にちが過ぎて──もしかしたらあっという間だったのかもしれない──、七月六日がやってきた。
……
「部屋、どこ? ……わかった、そこで待ってて」
令和六年七月六日、土曜日。十一時に迎えに行く。そう言われたから、布団に入り目を見開いて暗い天井を見上げたまま。眠れるはずがなかった。大好きな逸瑠辺さんと、親も知らない深夜に、内緒で会うのだから。
ベランダも下に屋根もない、鳴るはずの無いガラスをこんこんとノックする音がする。布団から飛び起きて、カーテンを開ける。水色の瞳を光らせる少女が、宙に浮かんでいる。
「待たせたね」
機動戦士のモビルスーツのプラモを持って行った。薄暗いかんおけだけの部屋の中。ランドセルからそれを出すと、彼女は光る瞳をさらに輝かせた。赤い服のぬいぐるみといっしょに遊んだ。モビルスーツとぬいぐるみはダンスを踊った。ぬいぐるみがモビルスーツの悲劇のヒロインになることもあった。
楽しかった。
家に帰っても、お風呂の時も、おふとんに入った時も。翔と学校に通う時も、あゆみ先生の授業を聞いている時も。ずっとずっと、大好きな女の子のことを想った。お父さんもお母さんもいない、あの子の寂しさに思いをはせた。夜、眠らずに一人でかんおけに座る、彼女のことが脳裏にうかんだ。モビルスーツとぬいぐるみで遊ぶ、嬉しそうな目が頭からはなれない。
そうして、長い長い日にちが過ぎて──もしかしたらあっという間だったのかもしれない──、七月六日がやってきた。
……
「部屋、どこ? ……わかった、そこで待ってて」
令和六年七月六日、土曜日。十一時に迎えに行く。そう言われたから、布団に入り目を見開いて暗い天井を見上げたまま。眠れるはずがなかった。大好きな逸瑠辺さんと、親も知らない深夜に、内緒で会うのだから。
ベランダも下に屋根もない、鳴るはずの無いガラスをこんこんとノックする音がする。布団から飛び起きて、カーテンを開ける。水色の瞳を光らせる少女が、宙に浮かんでいる。
「待たせたね」