この日は朝起きたら体が重怠くて、起き上がるのもままならなかった。とても水垢離ができるような状態ではなかったため、住職に電話。住職がお弟子さんと迎えに来てくれて、犬二匹とともに寺へと移動した(犬はお弟子さん達が面倒をみてくれた。感謝)。

「予想していたより早かったですね」

 寺の一室で横になった私に、住職はいつもと変わらぬ口調で言った。

「私のやり方が悪かったんでしょうか」
「いえ、そんなことはありません。ただあなたは元々が強くないので、うまく逃げられず押し負けてしまったんですね」

 一番心配していた点は大丈夫だったものの、根本的なところに無理があったらしい。確かにそれなら、縺九∩縺輔∪に押し負けてしまうのも仕方ない。

「どうしたらいいんでしょうか」
「御本尊様にお守りいただきましょう。今晩やり過ごせば、大丈夫なはずです」

 住職は解決策を告げて、座敷を出て行った。相変わらずの調子だからどれくらい自分が危うい状況なのか全く分からず不安だったが、だからといって私にできることはない。素直に、何か言われるまで眠ることにした。そういえば、吐血のせいか悪夢を見たせいで、眠れていなかった。ぼんやりとしか思い出せないが、縺ゥ縺薙°證励>縺ィ縺薙m縺ァ縲∝酔縺倥%縺ィ縺ー繧剃ス募コヲ繧ょ臓縺九l縺ヲ縺滓ー励′縺吶k縲

※11/20追記:こちらの原稿も文字化けしています。たぶん夢の内容を書いたのだと思います。多分、證励>縺ィ縺薙m縺ァ蜷後§縺薙→縺ー繧定◇縺阪▽縺・縺代※いた、というような内容でした。


 夜になる頃には体調も回復し、寺で精進料理をいただいた。この日はこの食事が初めてだったので、五臓六腑に染み渡るようだった。
 住職は夕食をとったあと、私を本堂へ呼んだ。揺らめく蝋燭の灯りに照らされた御本尊は厳かで、自然と気持ちが引き締まった。
 住職は内陣の前に置かれた長持の横に立っていて、私が近づくとその蓋を開けた。

「ここに一晩隠れていてください」

 置いてある長持は多分一般的なサイズだから長さは約一七〇センチ、幅と高さは約七十五センチだ。私の身長は一六〇センチ弱だから、棺桶みたいに横たわることはできる。ただ板だから体が痛くなるだろうし、蒸し暑さに耐えられるとは思えない。
 明らかに渋い顔をする私を見て、住職は笑った。

「入らない方法もありますが、そちらは精神に異常を来す可能性があります」
「入ります」

 一思いに死ぬならともかく、中途半端なダメージで生き残るのが一番周囲に迷惑が掛かる。それだけは避けたかったので、長持に入る方法を選んだ。


 二十二時過ぎ、寝る準備を整えて本堂へ向かい、準備をしている住職に改めて話を聞く。袈裟を身に着けた住職は、これから夜明けまで私のために経を上げてくれるらしい。自分の快適さしか考えていなかったことが恥ずかしく、本当に反省した。
 住職から言い渡されたことは二つ、

・住職が長持を開けるまで長持から出ないこと
・長持の中にいる間は決して喋らないこと

 だった。

 それさえ守れば中で寝返りを打ってもいいらしいのと、住職が長持の底に座布団を敷いてくれたので(すみません)、思っていたよりは大丈夫そうに感じた。

 また、完全に閉めたら酸欠になる可能性があるため、板を噛ませて蓋が完全に閉まらないようにしてくれた。はっきりと向こうが見えるほどの隙間ではなかったが、向こうとの繋がりを感じられて心強かった。

「眠れたら、遠慮せず眠ってください。その方がいいですから」

 含みのある住職の言葉に頷いて、眠れることを願いながら目を閉じた。


 眠れる気がしなかったが、住職の経を聞いているうちにいつの間にか眠っていた。目が覚めたのは、なんとも言えない感覚が全身に走ったからだ。

 長持の外に確実に何かが、縺九∩縺輔∪がいた。この前の「夫らしきもの」の時は何も感じなかったが、この時は全身から冷や汗が噴き出るのが分かった。歯が鳴りそうで口元を両手で押さえ、無事に終わることをひたすらに祈った。

 さっきまで聞こえていたであろうお経はやんでいて、そのかわりに話し声が聞こえた。多分、住職と縺九∩縺輔∪だろう。縺九∩縺輔∪の声は逕キ縺ョ繧医≧縺ォ繧り◇縺薙∴縺溘′縲√>縺上▽縺矩㍾縺ェ縺」縺ヲ繧り◇縺薙∴た。

※11/20追記:こちらも原稿から文字化けしています。

 住職が教えてくれたときのように、音は拾えるものの、何を話しているのか全く分からなかった。

 不意に白檀のようないい香りがして隙間の方を見ると、何かと目が合ったような気がした。はっきりと言い切れないのは、多分、その瞬間に気絶してしまったからだろう。気づいたら朝で、住職が蓋を開けて「おはようございます」と挨拶をした。