ーーー昼休み、西校舎B-2

送られてきた文に目を通せば楓は溜息をつく。
相手は勿論あの男しかいない。
「何の用?匠哉」
もう二度と話すことなんてないと思ってたのに。
隣にいる筈の叶華は今日はいないよう。
「冷たいな、俺が振ったから怒ってんの?」
「別に。ただ貴方とはもう話たくない」
「そんなこと言うなよ。俺達の仲だろ?」
白々しい。何を今になって…
「悪いけど、私はもう八咫烏グループの人間じゃない。だから関わらないで」
「へ~そういや親子の関係を切ったらしいじゃん。ウチも騒いでたぞ」
酒吞財閥が婚約発表までしたんだ。
井崎グループが知らないわけもない。
「お前と別れて、叶華との婚約に親父が反対なんだ。叶華は役に立たない、お前と寄りを戻せってうるさくてよ~」
「…どういうこと?」
井崎会長とは前に婚約の挨拶で会ったことはある。だがそれだけ。寧ろ楓に無関心だと思っていたのに。
「お前が酒吞と婚約してからコッチも大変なんだよ。何言っても親父は叶華を認めない。少しは叶華の気持ちも考えろよ」
「考えろ?何言ってるのよ。散々私のこと裏で騙しといて!」
たまらずそう叫べば、匠哉は溜息をついた。
「それはお前が無能だからだろ。叶華と違って容姿も才能も優れない。井崎の品位を下げるには十分すぎんだよ」
「は、」
「中でもその顔は一番嫌いだわ。見てて気味が悪い」
そんな言葉に楓は怒りがおさまらない。許せることなら今すぐにでも地平線の彼方にぶっ飛ばしてやりたかった。
「八咫烏を裏切ったと思ったら今度は酒吞かよ。一体どんな手使った?」
「そんなことしてない!」
「ならなんで奴らはお前の肩なんか持つ?これ以上、俺達に泥を塗るような真似すんなよ」
ウンザリしたような顔で説教する匠哉。
楓はもう我慢の限界だった。

一発ぐらい、、そう楓は力拳を作る。

「楓様、コイツやっつける」
「やっつける」
すると背後からは座敷わらし達が飛び出してきた。
「うわ!な、なんだよソイツら!!」
彼女達はビックリする彼の元へ、手からはビームのようなものを放つ。お陰で匠哉の服は焦げてチリチリだ。
「オマエ、楓様を傷つけた」
「傷つけた」
「楓様の敵とる」
「とる」
再び攻撃体制に入る彼女達。
楓は「待って!」と言って慌てて止めれば、素直にも彼女達は攻撃を止めてくれた。
「な、なんなんだよ…クッソ覚えてろよ」
匠哉はその隙に怒ったように楓を睨めば教室を出て行ってしまう。
「守ってくれてありがとう。でも二人共、やりすぎはダメ」
彼が去った後、楓が軽く説教すれば二人は互いを見つめ合う。
「あの男、楓様が嫌いな奴。見張っておこう」
「楓様の為に。見張っておこう」
今度は楓を見上げてそう言う。
楓は笑って彼女達の頭を撫でてやる。
「ほどほどにね?」
ここでダメと言わないのが楓なのだ。
すると彼女達は謎に気合いを入れていた。