あれから抵抗する間もないまま手を取られ、連れてこられたのは隠世。
「こっちに来たのは初めてか?どうだ?初めての異界は」
「なんか…気持ち悪い」
さっきから吐き気を催す感覚に体が前のめりになる。
「人間に異界の空気はちとキツかったか。とは言え、慣れるまでは辛抱してくれ」
「うぅ…それで貴方のことは何て呼べばいいの?鬼嶋君?それとも弥一さん?」
「好きなように呼べ。別に拘りなんかねーよ」
「じゃあ…弥一?」と、楓が聞けば「そこは呼び捨てかよ笑」と向こうは笑っていた。
「んじゃま、家に帰りますかね」
「え、ちょっと待って!私さっきも言ったけど家に帰らないと!」
両親と言う立場上、あの人達が自分を野放しにしとく手もない。中でも母親は世間帯を気にする人だから。
「問題ない、戻ったら連絡するよう伝えとく。それにお前の親とは今後のことを話し合わないとだからな」
「今後のこと?」
首を傾げれば、弥一は黙って歩いて行くので慌てて後を追いかける。軍服の鬼を先頭に制服姿の女が歩く。その姿は目立つらしく、キョロキョロと辺りを見渡せば人間らしからぬ、言わば異界に住む妖達がこちらを観察していた。
「凄い…妖がいっぱいいる」
「そりゃあ隠世だ、むしろ人間がいる方が珍しい」
「弥一は鬼の妖なんでしょ?でも人間界では男子高校生に化けて生活していたよね?妖って異界から出れないものとばかり思ってた」
「出れないことはねーよ。魔物が人間界に出るように、俺達だって同じことはできる。ただそれには人間に変幻できるだけの妖力がないとダメだがね」
「どういう事?」
「妖ってのは人間に化けないと人には普通見えないんだよ」
「そうなの⁈」
あ、でも言われてみれば。
確かに人間界じゃ誰も妖なんてもの見えていない。
本当はいても可笑しくはない、そんな妖達を人間が確認できてないだけなんだ。
「詳しい話は後だ。さ、着いたぞ」
「スゲー…デカイ」
目の前に映る巨大な日本構造を宿したお屋敷。
豪邸?館?とも表現すべきか、それにしても大きすぎた。
「ここが弥一の家?」
「まあな」
表門を潜れば中からは使用人らしき妖達の姿が。
「おかえりなさいませ、若。お勤めご苦労様です」
前方からやってきた一人の男性。
白いちょび髭にタキシードのような服装、片目には眼鏡と執事のような格好をすれば、弥一にうやうやしく頭を下げる。
「よっ、戻ったわ」
「それで今回はいかがでしたかな?」
「Bクラスの魔物だ。上からの指示で着いた時には成熟化一歩手前だった。人間に被害が及ぶ前に仕留められて良かった」
「それはそれは、流石は若ですな。っと、若、そちらの女性は??」
男性は楓に気が付くと目をパチパチさせていた。
「コイツは八咫烏楓。あの八咫烏磯五郎の孫だ。同時に娶ることにしたから」
「ななな、なんと!!あの八咫烏様直系の⁈こうしちゃおれん…直ぐに家の者達へ連絡を!」
「悪いな、俺は先に報告へ行く」
すると辺りは一気にバタバタと騒がしくなる。
不意に背後に気配を感じれば傍らには二人の女性。何やらニコニコと笑って楓を見ている。
「楓、お前も着替えてこい」
「え?」
「ソイツらがお前を案内してくれるから」
「あ、ちょ、弥一⁈」
楓が呼ぶも彼は一人先に何処かへ行ってしまう。
「さあ花嫁様、こちらへ!!」
「こちらへ~」
有無を返さず二人に両腕を掴まれれば、敷地内へと連れて行かれる。そして通された場所で服をはぎ取られた。ビックリして抵抗するも、間もなくしてすっ裸のまま風呂に突っ込まれれば、全身くまなく洗われる。
「イヤー誰か助けてーー!!」
だが彼女達は嬉しそうに作業する手を止めない。
怖い!なんでこんなことに…
恥ずかしい場所も全部見られた。
楓はゲンナリした顔で半ば死んだように大人しくしていれば、気づいた時、自分は綺麗な着物を着ていた。空手で鍛えあげられた体には所々細かい傷もある。彼女達はそこも丁寧に手当してくれたようで、今は保湿ケアまでしている。
「なんかすみません…」
「いえいえ!花嫁様をお世話できるなんて光栄でございます」
二人のうち、一人がそう答える。
「えーっと、私は八咫烏楓と言います。貴方達は??」
「あらついうっかり!申し遅れました、私は一江と申します」
「私は妹の二江です!」
聞けば彼女達は姉妹のようだ。
酒呑童子に代々仕える鬼の妖らしく、普段はここで働いているとのこと。
「楓様は烏本家様のお孫様なんですよね⁈」
「烏本家様のお孫様にお会いできる日が来るなんて!!」
二人は目を輝かせていたが、烏本家っておじいちゃんのこと?
「おじいちゃんを知っているの?」
「勿論です。逆にあの方を知らぬ者などおりませんよ」
一江さんが言えば、二江さんもウンウンと頷いている。
「さあ参りましょう!」と二人のペースに乗せられれば、装飾の綺麗な大きな扉の前まで連れて来られる。
「若様がお待ちですよ」
中に入ればソファーに座る弥一の姿が。
「よお、来たか」
チラリと目を向けた弥一はこちらを観察してくる。
「ふ~ん、なかなか可愛いらしいじゃないの。よくお似合いですよオジョウサン」
「ねえちょっと、ちゃんと説明してよ」
ニヤニヤと笑う彼に、楓は半ば怒った顔で近づく。
「まず一つだけ言いたい!私は貴方と結婚する気ない」
「その前に父親へ報告が先。直ぐ来るからお前も座れよ」
ちょいちょいと自分の隣を指差しそう言われるも、な~んか胡散臭いので向かい側の席に座ることにした。すると向こうは可笑しそうに笑っていた。
「そんな警戒しなくとも。今はまだなんもしねーよ」
「ま、まだ?まだって何⁈」
コイツ、、やっぱ一発足蹴りでもしとくか??
鬼であろうと襲ってくるなら関係ない。楓はいつでも技をかけられるよう軽いイメトレを行う。
「そういや明日、お前の家に挨拶行くことになったから」
「挨拶?なんの??」
「ん~?娘さんを俺の花嫁候補に。同時に八咫烏磯五郎との養子縁組を結ぼうって話」
「養子縁組?」
次から次へと話される内容に理解が追いつかない。
「お、いるねいるね~」
「!!!」
するとドアが開き、入ってきたのは一人の男性。
「やあ弥一。パパが帰ってきたぞ~」
「パ、パパ⁈」
「こっちに来たのは初めてか?どうだ?初めての異界は」
「なんか…気持ち悪い」
さっきから吐き気を催す感覚に体が前のめりになる。
「人間に異界の空気はちとキツかったか。とは言え、慣れるまでは辛抱してくれ」
「うぅ…それで貴方のことは何て呼べばいいの?鬼嶋君?それとも弥一さん?」
「好きなように呼べ。別に拘りなんかねーよ」
「じゃあ…弥一?」と、楓が聞けば「そこは呼び捨てかよ笑」と向こうは笑っていた。
「んじゃま、家に帰りますかね」
「え、ちょっと待って!私さっきも言ったけど家に帰らないと!」
両親と言う立場上、あの人達が自分を野放しにしとく手もない。中でも母親は世間帯を気にする人だから。
「問題ない、戻ったら連絡するよう伝えとく。それにお前の親とは今後のことを話し合わないとだからな」
「今後のこと?」
首を傾げれば、弥一は黙って歩いて行くので慌てて後を追いかける。軍服の鬼を先頭に制服姿の女が歩く。その姿は目立つらしく、キョロキョロと辺りを見渡せば人間らしからぬ、言わば異界に住む妖達がこちらを観察していた。
「凄い…妖がいっぱいいる」
「そりゃあ隠世だ、むしろ人間がいる方が珍しい」
「弥一は鬼の妖なんでしょ?でも人間界では男子高校生に化けて生活していたよね?妖って異界から出れないものとばかり思ってた」
「出れないことはねーよ。魔物が人間界に出るように、俺達だって同じことはできる。ただそれには人間に変幻できるだけの妖力がないとダメだがね」
「どういう事?」
「妖ってのは人間に化けないと人には普通見えないんだよ」
「そうなの⁈」
あ、でも言われてみれば。
確かに人間界じゃ誰も妖なんてもの見えていない。
本当はいても可笑しくはない、そんな妖達を人間が確認できてないだけなんだ。
「詳しい話は後だ。さ、着いたぞ」
「スゲー…デカイ」
目の前に映る巨大な日本構造を宿したお屋敷。
豪邸?館?とも表現すべきか、それにしても大きすぎた。
「ここが弥一の家?」
「まあな」
表門を潜れば中からは使用人らしき妖達の姿が。
「おかえりなさいませ、若。お勤めご苦労様です」
前方からやってきた一人の男性。
白いちょび髭にタキシードのような服装、片目には眼鏡と執事のような格好をすれば、弥一にうやうやしく頭を下げる。
「よっ、戻ったわ」
「それで今回はいかがでしたかな?」
「Bクラスの魔物だ。上からの指示で着いた時には成熟化一歩手前だった。人間に被害が及ぶ前に仕留められて良かった」
「それはそれは、流石は若ですな。っと、若、そちらの女性は??」
男性は楓に気が付くと目をパチパチさせていた。
「コイツは八咫烏楓。あの八咫烏磯五郎の孫だ。同時に娶ることにしたから」
「ななな、なんと!!あの八咫烏様直系の⁈こうしちゃおれん…直ぐに家の者達へ連絡を!」
「悪いな、俺は先に報告へ行く」
すると辺りは一気にバタバタと騒がしくなる。
不意に背後に気配を感じれば傍らには二人の女性。何やらニコニコと笑って楓を見ている。
「楓、お前も着替えてこい」
「え?」
「ソイツらがお前を案内してくれるから」
「あ、ちょ、弥一⁈」
楓が呼ぶも彼は一人先に何処かへ行ってしまう。
「さあ花嫁様、こちらへ!!」
「こちらへ~」
有無を返さず二人に両腕を掴まれれば、敷地内へと連れて行かれる。そして通された場所で服をはぎ取られた。ビックリして抵抗するも、間もなくしてすっ裸のまま風呂に突っ込まれれば、全身くまなく洗われる。
「イヤー誰か助けてーー!!」
だが彼女達は嬉しそうに作業する手を止めない。
怖い!なんでこんなことに…
恥ずかしい場所も全部見られた。
楓はゲンナリした顔で半ば死んだように大人しくしていれば、気づいた時、自分は綺麗な着物を着ていた。空手で鍛えあげられた体には所々細かい傷もある。彼女達はそこも丁寧に手当してくれたようで、今は保湿ケアまでしている。
「なんかすみません…」
「いえいえ!花嫁様をお世話できるなんて光栄でございます」
二人のうち、一人がそう答える。
「えーっと、私は八咫烏楓と言います。貴方達は??」
「あらついうっかり!申し遅れました、私は一江と申します」
「私は妹の二江です!」
聞けば彼女達は姉妹のようだ。
酒呑童子に代々仕える鬼の妖らしく、普段はここで働いているとのこと。
「楓様は烏本家様のお孫様なんですよね⁈」
「烏本家様のお孫様にお会いできる日が来るなんて!!」
二人は目を輝かせていたが、烏本家っておじいちゃんのこと?
「おじいちゃんを知っているの?」
「勿論です。逆にあの方を知らぬ者などおりませんよ」
一江さんが言えば、二江さんもウンウンと頷いている。
「さあ参りましょう!」と二人のペースに乗せられれば、装飾の綺麗な大きな扉の前まで連れて来られる。
「若様がお待ちですよ」
中に入ればソファーに座る弥一の姿が。
「よお、来たか」
チラリと目を向けた弥一はこちらを観察してくる。
「ふ~ん、なかなか可愛いらしいじゃないの。よくお似合いですよオジョウサン」
「ねえちょっと、ちゃんと説明してよ」
ニヤニヤと笑う彼に、楓は半ば怒った顔で近づく。
「まず一つだけ言いたい!私は貴方と結婚する気ない」
「その前に父親へ報告が先。直ぐ来るからお前も座れよ」
ちょいちょいと自分の隣を指差しそう言われるも、な~んか胡散臭いので向かい側の席に座ることにした。すると向こうは可笑しそうに笑っていた。
「そんな警戒しなくとも。今はまだなんもしねーよ」
「ま、まだ?まだって何⁈」
コイツ、、やっぱ一発足蹴りでもしとくか??
鬼であろうと襲ってくるなら関係ない。楓はいつでも技をかけられるよう軽いイメトレを行う。
「そういや明日、お前の家に挨拶行くことになったから」
「挨拶?なんの??」
「ん~?娘さんを俺の花嫁候補に。同時に八咫烏磯五郎との養子縁組を結ぼうって話」
「養子縁組?」
次から次へと話される内容に理解が追いつかない。
「お、いるねいるね~」
「!!!」
するとドアが開き、入ってきたのは一人の男性。
「やあ弥一。パパが帰ってきたぞ~」
「パ、パパ⁈」