「行ったか…」
向こうを見つめる青年。
すると道場には本来の明るさが戻り、魔物も綺麗に消えていた。
「楓様!」
「楓様、大丈夫?」
座敷わらし達が心配して駆け寄ってくる。
「大丈夫だよ。二人共、守ってくれてありがとね」
撫でれば二人は嬉しそうに顔をほころばせていた。
うん、可愛い。
「楓様、お怪我はないでござるか?」
「あ、はい、お陰で助かりました。それで貴方は?」
心配そうに楓を見つめる青年は、鳥の嘴をした面のようなもので口元を覆い、忍者のような出で立ちで手には刀剣を持っている。
「拙者、酒吞家にて烏の役割を担っております。名を夜ノ丸と申す」
「烏?」
「烏とは酒吞家を守る影の護衛でござるよ。敵への攻撃に備え、館の見張りはもちろんのこと、酒吞様を影から護衛もいたす」
夜ノ丸がピーっと口笛を吹けば、そこには同じような出で立ちの烏が現れる。彼らは烏天狗と鬼が派生して産まれた烏鬼と呼ばれる妖らしく、山奥の山頂に住処を構えるという。
「楓!!」
すると道場には美玲達が入ってくる。
「楓、大丈夫⁈どこも怪我してない⁈魔物は⁈」
「美玲、落ち着いて。怪我もしてないし魔物は彼らがやっつけてくれたから」
視線を移せば彼らは静かにそこに立っている。
「え、嫌だ何このイケメン…」
美玲は彼らを見るとその綺麗さに見とれている。隣では清史郎が「お前な…」とこれに呆れていた。
「楓」
「おじいちゃん!」
磯五郎は楓の側にやってくれば、心配そうに顔を見つめた。
「敵襲があったと報告を受けた。来るのが遅くなってすまなかった」
「私は大丈夫だよ。幸い座敷わらしちゃん達がいたから。あと夜ノ丸君達も助けてくれたし」
磯五郎は夜ノ丸達を見れば「…烏か」と一言呟いた。
「楓が世話になったな」
磯五郎がお礼を言えば、彼らはその場に跪いた。
「いえ、これも我ら烏の役目。若様より、楓様の身を保護するよう仰せつかっておりました。到着が遅くなり申し訳ない」
楓はそれに驚いた。
聞けば自分が行けない代わりに烏達を護衛に頼んでいたと言う。それもこれも桃源郷から楓を守る為の弥一の優しさだった。
「先ほどの刺客、桃源郷の手先でまず間違いないでござる。八咫烏様、今後この家には鬼の結界が必要になるかと」
「…そうか」
烏本家は本来、磯五郎の張る結界で外からの攻撃を防いでいる。だが今回はその結界を突破されてしまった為、酒吞童子が直ぐにでも外から鬼の結界を張ってくれるとのことだった。
「楓!無事か⁈」
「弥一!」
扉が開けば弥一が息を切らして駆け込んできた。
「桃源郷に襲われたと連絡があって飛んできた。どこも怪我してないか⁈」
「うん、大丈夫だよ」
楓がそう言えば、弥一はホッと息をつく。
「悪いが今日は戻るぞ。父さんには連絡入れたから直ぐ来る。ここには烏を何人か置いていく。八咫烏、構わないか?」
「ああ、問題ない」
磯五郎は楓に「また来なさい」と言って頭を撫でた。道場を出れば紅楊さんが待っていたので車に乗り込む。折角の特訓も暫くはお休みだ。
「あ、ねえ楓、親睦会の件は決まった?」
帰り際、美玲から言われ思い出す。年に一回、学校が運営する親睦会で、学校の生徒ならまず参加するもの。参加はまず気乗りしないが、立場上は出席しないとなので楓は渋々行く旨を伝えた。
向こうを見つめる青年。
すると道場には本来の明るさが戻り、魔物も綺麗に消えていた。
「楓様!」
「楓様、大丈夫?」
座敷わらし達が心配して駆け寄ってくる。
「大丈夫だよ。二人共、守ってくれてありがとね」
撫でれば二人は嬉しそうに顔をほころばせていた。
うん、可愛い。
「楓様、お怪我はないでござるか?」
「あ、はい、お陰で助かりました。それで貴方は?」
心配そうに楓を見つめる青年は、鳥の嘴をした面のようなもので口元を覆い、忍者のような出で立ちで手には刀剣を持っている。
「拙者、酒吞家にて烏の役割を担っております。名を夜ノ丸と申す」
「烏?」
「烏とは酒吞家を守る影の護衛でござるよ。敵への攻撃に備え、館の見張りはもちろんのこと、酒吞様を影から護衛もいたす」
夜ノ丸がピーっと口笛を吹けば、そこには同じような出で立ちの烏が現れる。彼らは烏天狗と鬼が派生して産まれた烏鬼と呼ばれる妖らしく、山奥の山頂に住処を構えるという。
「楓!!」
すると道場には美玲達が入ってくる。
「楓、大丈夫⁈どこも怪我してない⁈魔物は⁈」
「美玲、落ち着いて。怪我もしてないし魔物は彼らがやっつけてくれたから」
視線を移せば彼らは静かにそこに立っている。
「え、嫌だ何このイケメン…」
美玲は彼らを見るとその綺麗さに見とれている。隣では清史郎が「お前な…」とこれに呆れていた。
「楓」
「おじいちゃん!」
磯五郎は楓の側にやってくれば、心配そうに顔を見つめた。
「敵襲があったと報告を受けた。来るのが遅くなってすまなかった」
「私は大丈夫だよ。幸い座敷わらしちゃん達がいたから。あと夜ノ丸君達も助けてくれたし」
磯五郎は夜ノ丸達を見れば「…烏か」と一言呟いた。
「楓が世話になったな」
磯五郎がお礼を言えば、彼らはその場に跪いた。
「いえ、これも我ら烏の役目。若様より、楓様の身を保護するよう仰せつかっておりました。到着が遅くなり申し訳ない」
楓はそれに驚いた。
聞けば自分が行けない代わりに烏達を護衛に頼んでいたと言う。それもこれも桃源郷から楓を守る為の弥一の優しさだった。
「先ほどの刺客、桃源郷の手先でまず間違いないでござる。八咫烏様、今後この家には鬼の結界が必要になるかと」
「…そうか」
烏本家は本来、磯五郎の張る結界で外からの攻撃を防いでいる。だが今回はその結界を突破されてしまった為、酒吞童子が直ぐにでも外から鬼の結界を張ってくれるとのことだった。
「楓!無事か⁈」
「弥一!」
扉が開けば弥一が息を切らして駆け込んできた。
「桃源郷に襲われたと連絡があって飛んできた。どこも怪我してないか⁈」
「うん、大丈夫だよ」
楓がそう言えば、弥一はホッと息をつく。
「悪いが今日は戻るぞ。父さんには連絡入れたから直ぐ来る。ここには烏を何人か置いていく。八咫烏、構わないか?」
「ああ、問題ない」
磯五郎は楓に「また来なさい」と言って頭を撫でた。道場を出れば紅楊さんが待っていたので車に乗り込む。折角の特訓も暫くはお休みだ。
「あ、ねえ楓、親睦会の件は決まった?」
帰り際、美玲から言われ思い出す。年に一回、学校が運営する親睦会で、学校の生徒ならまず参加するもの。参加はまず気乗りしないが、立場上は出席しないとなので楓は渋々行く旨を伝えた。