帰り道、楓は空手稽古のため美玲達と帰ることになった。
「今日は師匠のとこ泊ってくの?」
「ううん、後で弥一が迎えに来てくれる」
弥一は仕事場に行く用事があるらしく、迎えが少し遅れるとのこと。それまで空手をして待つことにする。
「弥一様ってあの酒吞童子の息子でいいんだよな?」
「そうだけど何で?」
「いやオーラがさ。なんか意識したらヤバいっつーか…妖だからか?」
弥一には二人のことを紹介している。
向こうも普段から二人のことは知っていたし、快く対応して鬼の姿も見せてくれた。
「でも妖ってやっぱ綺麗な顔してるわね~酒吞会長もイケメンだし」
美玲はイケメンに目がない。
視線はさっきから、弥一にお願いして撮って貰ったという写真に釘付けだ。
「写真も撮ってもらったし。んふふ、これは家宝にするわ!」
「おい美玲、俺の存在忘れてねーか?」
「目の保養~」と言って見つめる美玲に、彼氏のプライドをズタボロにされた清史郎はガッカリしていた。
「ん、なんだあれ」
暫くして、清史郎が指さす方向には一台の車。
「楓ー!!」
「え、お姉ちゃん⁈」
中からは叶華が泣きながら飛び出してきた。
「楓、八咫烏家と縁を切るってどういう事?」
叶華は取り乱した様子で楓へと詰め寄る。相変わらずの可愛さだ。
「…私、おじいちゃんと養子縁組を組む事にしたの」
「どうして?あんなにずっと仲良く暮らしていたのに。楓がいなくなって心配しているのよ?」
心配?何を根拠にそんなことを。叶華の話す意味が分からなかった。
「ちょっと叶華ちゃん!いきなり来て何の用よ」
美玲は怒ったように楓達の間に割って入る。
「八咫烏家が楓にしてきたこと考えれば、これは当然のことよ」
「そんなの可笑しい!楓が出ていったせいで、コッチはもう井崎からは取引ができないとまで言われてるの。匠哉君との婚約もできていないままだし、意味が分からないわ」
井崎が取引を蹴った。清史郎と目が合えば、彼は「な?」と言った顔をしていた。
「井崎の力あってこその八咫烏なのに。関係が切れたら援助も途絶えちゃうわ」
「ならお姉ちゃんが井崎と婚約すれば丸く収まるじゃん」
「それが出来ないから言ってるの!あっちは楓じゃないとダメだって。なんで楓なのか…」
そんなの自分が知るわけない。
井崎にとって、自分は今どんな判断材料にされているのか、楓は不思議で堪らなかった。
「とにかく私は無理。もうお姉ちゃん達とは縁も切ってるんだし。これ以上、関わらないで」
「なら若様に頼んでよ」
「え?」
叶華の頼み事に楓達は目を丸くした。
「あの酒吞と婚約したんでしょ?国のトップが味方なら井崎だって口出しできない。楓の口から若様に言って、お願いしてくれるだけでいいの。それで関係は修復できる」
「…嫌よ。第一、私、弥一をそんな風に使いたくない」
弥一は大切な存在。
こんな馬鹿げた話に利用する気なんて起こりもしない。
「なんでよ!私達家族でしょ?楓には私達がどうなってもいいって言うの?」
「そうさせてきたのは貴方達でしょ?」
いつだって悪者は自分なのか。
叶華の中に、一度でも妹の自分を大切だと思ってくれたことはあったのだろうか?
「おい、いい加減にしろよ」
清史郎が行き詰った空気を遮れば、叶華を遠ざける。
「何度も言ってるけど。今の楓に君たちは関係ないだろ」
「そうよそうよ!分かったらとっとと消えなさい!」
美玲も見かねて応戦する。
叶華は誰も助けてくれないと分かると泣いて走って行ってしまった。
「楓、大丈夫?」
「うん…ありがとう」
心配してくれる二人に楓は静かに微笑んだ。
できればもう二度と会いたくなんてなかった。
「今日は師匠のとこ泊ってくの?」
「ううん、後で弥一が迎えに来てくれる」
弥一は仕事場に行く用事があるらしく、迎えが少し遅れるとのこと。それまで空手をして待つことにする。
「弥一様ってあの酒吞童子の息子でいいんだよな?」
「そうだけど何で?」
「いやオーラがさ。なんか意識したらヤバいっつーか…妖だからか?」
弥一には二人のことを紹介している。
向こうも普段から二人のことは知っていたし、快く対応して鬼の姿も見せてくれた。
「でも妖ってやっぱ綺麗な顔してるわね~酒吞会長もイケメンだし」
美玲はイケメンに目がない。
視線はさっきから、弥一にお願いして撮って貰ったという写真に釘付けだ。
「写真も撮ってもらったし。んふふ、これは家宝にするわ!」
「おい美玲、俺の存在忘れてねーか?」
「目の保養~」と言って見つめる美玲に、彼氏のプライドをズタボロにされた清史郎はガッカリしていた。
「ん、なんだあれ」
暫くして、清史郎が指さす方向には一台の車。
「楓ー!!」
「え、お姉ちゃん⁈」
中からは叶華が泣きながら飛び出してきた。
「楓、八咫烏家と縁を切るってどういう事?」
叶華は取り乱した様子で楓へと詰め寄る。相変わらずの可愛さだ。
「…私、おじいちゃんと養子縁組を組む事にしたの」
「どうして?あんなにずっと仲良く暮らしていたのに。楓がいなくなって心配しているのよ?」
心配?何を根拠にそんなことを。叶華の話す意味が分からなかった。
「ちょっと叶華ちゃん!いきなり来て何の用よ」
美玲は怒ったように楓達の間に割って入る。
「八咫烏家が楓にしてきたこと考えれば、これは当然のことよ」
「そんなの可笑しい!楓が出ていったせいで、コッチはもう井崎からは取引ができないとまで言われてるの。匠哉君との婚約もできていないままだし、意味が分からないわ」
井崎が取引を蹴った。清史郎と目が合えば、彼は「な?」と言った顔をしていた。
「井崎の力あってこその八咫烏なのに。関係が切れたら援助も途絶えちゃうわ」
「ならお姉ちゃんが井崎と婚約すれば丸く収まるじゃん」
「それが出来ないから言ってるの!あっちは楓じゃないとダメだって。なんで楓なのか…」
そんなの自分が知るわけない。
井崎にとって、自分は今どんな判断材料にされているのか、楓は不思議で堪らなかった。
「とにかく私は無理。もうお姉ちゃん達とは縁も切ってるんだし。これ以上、関わらないで」
「なら若様に頼んでよ」
「え?」
叶華の頼み事に楓達は目を丸くした。
「あの酒吞と婚約したんでしょ?国のトップが味方なら井崎だって口出しできない。楓の口から若様に言って、お願いしてくれるだけでいいの。それで関係は修復できる」
「…嫌よ。第一、私、弥一をそんな風に使いたくない」
弥一は大切な存在。
こんな馬鹿げた話に利用する気なんて起こりもしない。
「なんでよ!私達家族でしょ?楓には私達がどうなってもいいって言うの?」
「そうさせてきたのは貴方達でしょ?」
いつだって悪者は自分なのか。
叶華の中に、一度でも妹の自分を大切だと思ってくれたことはあったのだろうか?
「おい、いい加減にしろよ」
清史郎が行き詰った空気を遮れば、叶華を遠ざける。
「何度も言ってるけど。今の楓に君たちは関係ないだろ」
「そうよそうよ!分かったらとっとと消えなさい!」
美玲も見かねて応戦する。
叶華は誰も助けてくれないと分かると泣いて走って行ってしまった。
「楓、大丈夫?」
「うん…ありがとう」
心配してくれる二人に楓は静かに微笑んだ。
できればもう二度と会いたくなんてなかった。