僕を嫁として受け入れる商売人たちの顔を、まともに見ることはできない。目線を逸らそうとしても硬直してしまう。

『みーんなお芋さんだと思えば、緊張しないでしょう?』

淡い記憶が蘇ってきた。
母だろうか、いや、父だ。
母の言葉を、父は幼き日の僕に伝えてくれた。人づての母にまつわる記憶だ。
すがるように文句を胸の内で繰り返した。そうすれば、ずーんと圧し掛かる重さがいくらか軽くなる。
婚姻の儀が終わり、南天健寿堂の人たちは三々五々に広間を立ち去った。やけに物々しい装いの祈祷師は姿を消していた。

「シロネ」
「芋……っ、じゃない、はいっ」
「はあ? ……芋はお前のことじゃないのか」