町一番の薬種問屋「南天健寿堂」に山里の小さな薬屋さん「大井や」の長子シロネとして嫁入りをする。
家柄に加え、人間として明らかに不釣り合いな長子同士の結婚を、旦那さまになる方がどう思っているのかわからなかった。
かすかに笑みを湛える口元は、商売人としての貌だ。僕に対して向けられたものではない。……と、分かっていても、気持ちは浮足立つ。
「シロネ」
「……っつ、あ、ははははい」
唐突に名を呼ばれた。つっかえながら返事をするが、適切な時分を逃したようでなぜ呼ばれたのかもわからぬまま、儀式は進行してゆく。初めて見る祈祷師と思しき男が、釣書を手にして何か喋っていた。
家柄に加え、人間として明らかに不釣り合いな長子同士の結婚を、旦那さまになる方がどう思っているのかわからなかった。
かすかに笑みを湛える口元は、商売人としての貌だ。僕に対して向けられたものではない。……と、分かっていても、気持ちは浮足立つ。
「シロネ」
「……っつ、あ、ははははい」
唐突に名を呼ばれた。つっかえながら返事をするが、適切な時分を逃したようでなぜ呼ばれたのかもわからぬまま、儀式は進行してゆく。初めて見る祈祷師と思しき男が、釣書を手にして何か喋っていた。